第22話 『王立学校』
「………えーっと?俺の耳付いてる?幻聴聞こえたんだけど」
頭にハテナマークが浮かぶ。王立学校ってあの王立学校……?貴族級の人間しか行けないあの……?いやまさか。聞き間違えたんだろう。
ゴリ爺は気分を損ねたのか、少しムッとした顔をした。
「おいユナ。儂が言ったことを無かったことにする気か?王立学校に推薦する。残念だが儂はそう言ったぞ」
えっと?おうりつがっこうにすいせん……?王立学校に、推薦………
「はぁぁああああぁ!?」
思わず大声で叫んだ。周りの客の目など気に出来なかった。それほどに俺の驚きはかつてない程のものだった。
「うおっ!うるさいだろ!てめえはうちでのバイトで何を学んだんだよ」
「うるせえ黙れ!それより王立学校って何だよ!?俺のスキルでそんなとこ行けるわけないだろうが!」
「うるせえのはユナ、てめえだ!俺のコネで連れて行ってやるよ。そこでうまく生きていければここで雇ってやる。そのためのテストみたいなもんだ」
「意味わかんねえ!」
絶句してしまった。王立学校といえば超名門中の超名門。王国一番の学校だ。基本的に神学、ひいてはギフト、つまりスキルについて学びを深める学校らしい。要するに。
――――圧倒的に俺に適正がない
しかも、聞くところによると神学など名ばかり。王国学校はスキル至上主義であり、スキルの強力な者ほど権力を持つと聞く。
いやいやいや。Eランク村人の俺が生きていけるはずがない。頭を抱えた。
「父さんも母さんもなんか言ってくれよ!俺が王立学校なんて絶対に無理だってさ!」
傍観者を決め込む二人に水を向けた。二人で一瞬見つめ合ったあと、母さんがため息をついた。
「私もそう思うわ。でも、ゴリ爺の事だから、どうせもう手は打ってあるんでしょう?」
母さんの諦観混じりの視線を受け流し、ゴリ爺はニヤリと笑った。
「もちろん、もう学長に話は通してある。後は学校に向かいさえすればユナはもう立派な王立学校生だ」
「………ユナ。諦めなさい。どうせもう道はないの」
「そこをなんとか!」
「諦めろユナ。もう引き返せん。ほら」
いつのまにかゴリ爺の膝の上に冊子が乗っていた。ゴリ爺はそれを俺に渡し、開くように促した。
「……学生証?」
開くと、写真と名前が載っていた。それは、どう見ても俺のものに相違なかった。
俺はそれを勢いよく床に叩きつけた。王国最高の学生証。売れば何ラフィアになるのか見当もつかないが、そんな事にかまってられなかった。
「父さん!なんとか言ってくれ!」
もう父さんが最後の砦だ。俺は頭を深々と下げた。
「ゴルタイア」
父さんが言う。
「そこは、信頼出来るか?」
ゴリ爺が言った。
「そうじゃなきゃ推薦しない」
それを聞き、父さんは表情を緩めた。俺は直感した。これは、詰んだ。
ゴリ爺は俺に向かって言った。
「あと3日後位に出発するぞ。それまでに用意しとけよ。長い旅になるからな」
ゴリ爺は立ち上がり、椅子をしまった。そして厨房に去っていった。
俺は急展開においていかれ、呆然とした顔でそちらを見ていた。
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