第13話 『Eランク=スキル無し』
「何の用だよ」
俺は素直に尋ねた。
「その前に、挨拶は返そうか」
「……おはよう」
俺は少し苛立ちを込めて言った。
「うん。よろしい」
父さんが満足げな顔で頷く。そんなことより早く用事を言ってくれ。俺はそう思った。それが顔に出ていたのか、父さんはすぐに話を続ける。
「早速だけど、ユナは昨日、Eランクスキルをギフトとして授かったよね」
なんのためらいもなくズケズケと尋ねてきた。俺はまた苛つく。
「……それがどうしたってんだ」
「うん、その『ストレージ収納』だっけ? 普通の『物質亜空間収納』と何が違うんだろう。ユナ、使ってみた?」
首を横に振った。名前からしてよくあるタイプの亜空間収納スキルだろう。一定程度の重さのものを亜空間に収納し、任意のタイミングで取り出せるものだ。だが、Eランクスキルである以上どうしようもないようなスキルに違いない。
父さんは少し考え込んだ後、言った。
「ちょっと使ってみてくれないかな」
どうせそんなことだろうと思った。俺はため息をついた。よく聞く、『親試験』って奴だ。自分の子供のスキルを調べて、少しでも他家庭にマウントを取りたいという意地汚い行為。父さんに少しばかり失望を抱いた。
「別にいいけど」
これからどうせ俺のスキルに失望を重ねるんだ。今のうちにお互いハードルを下げていったほうが良いだろう。
父さんは俺の思いを知ってか知らずか、少しウキウキした表情をしている。
「うーん、じゃあねぇ。あ、この皿収納出来る?」
それは一般的によくあるタイプの木皿で、かなり軽く片手で持てるような代物だった。これが収納できないはずはないと、俺はステータスを開いた。数年スキルを使い、慣れれば無詠唱で発動出来るらしいが、最初のうちはストレージ画面を開き、詠唱をした方が上手く行くというのは常識だった。
俺は手を掲げた。
「『ストレージ収納』」
その瞬間に、目の前の木皿が消えてしまい、俺のステータス欄に追加される……はずだった。
「は!?」
木皿は何も変わりなくそこに存在していた。
父さんは察したように笑った。
「流石Eランク。これで重量オーバーかぁ」
父さんはのんきにそんなことを言っている。でも、これ結構やばいことなんじゃないか?
「こんなんも収納出来ねえの!?」
マジかよ……俺は頭を抱えた。Lvを上げれば数十キログラムを運べるAランク亜空間収納スキルですら、Aランクスキルの中では若干外れ扱いされているのに、これじゃあ実質スキルなしと言ってもいいんじゃなかろうか。
しかし、父さんは何故かまだ薄く笑みを浮かべていた。
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