第15話 『偽装スキル』

「どうなってるんだ……?」


 俺はそうつぶやいた。木製だったはずのボタンは、いつの間にか金属製の物に変わっていた。いや、そもそも家に木製のボタンなんてあったか? 父さんの私物だと思ってたけど、服に無頓着な父さんがボタンなんて持ってる訳がない。


「ユナ、ステータス画面を見てみて」


 父さんに言われるがままステータス画面を見た。すると、何ということだ。目を疑った。そこでは、絶対に起こり得ないはずのことが起こっていた。


「な、何だこれ!?」


 俺は思わず声に出して叫んだ。



【ユリーナ=メロリング】

〈クラス〉

 村人Lv1(レベルアップまで残り経験値46)



〈スキル〉

 Eランク

 ・ストレージ収納Lv1(熟練69)



〈特殊スキル〉

 Bランク

 ・偽装Lv94(熟練MAX)



 明らかに俺のものではないスキル『偽装』がステータス画面に加わっていた。これは、一体……?


「それは僕のスキルだよ。ユナ」


 ……父さんは思考を読んでいるのだろうか。俺はあまりにタイミングのいい父さんの返答に驚いた。というか、何故父さんのスキルが俺のステータス画面に?


「そのスキル、使ってみて?」


「は?どうやって使うんだよ」


「うーんとね。物を別のものに見せかけるスキルなんだけど……」


 俺は父さんの言葉を遮った。


「りょーかい。多分いける」


 よく分からないけど、普通のスキルを使うのと同じ感覚で発動してみよう。対象は―――ひとまずあの床のボタンでいいか。


「『偽装』」


 俺は、半信半疑でスキルを使った。その瞬間、ボタンに変化が起きた。


「ふーん。ユナ、やるじゃん」父さんが呟いた。


 銀色に輝いていたボタンが、くすんだ木製のボタンに変わっていた。


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