第4話 『最弱クラス、村人』

「なんの事だ?そんなの俺の勝手だろ」少しムッとした。ギフトへの期待が顔に出ていたのだろうか。それにしても、言い方ってもんがあるだろう。


「つまりな、ユナ。夢を追うのもいいが、そろそろ、現実を見た方がいいぞってことだ」


「は?」いきなり諭すような口調で言ってくるので、苛立ちが募る。俺は思わず早口になって言い返した。


「見えてるよ。明後日の15の誕生日、ギフト授与をされる。そこで特級スキルを含めて10個くらいスキルを得る。その能力を活かしたクラスへ転職する。…完璧だろ?」


 かっと頭に血が上って早口でまくしたてた。俺の人生だ。プラン立てだってしてる。確かに村人は最弱クラスだが、そこから抜け出す方法が一つだけある。それが転職だ。己の持つスキルに合わせたクラスに変える事ができる。それさえしてしまえば、こんなクラス……


 爺はしかし、表情を崩すことすらしなかった。


「はぁ………」


 そして、またまた大きなため息をついた。


「それが夢だってんだよ。ふつう15くらいになりゃあ気づくんだが、お前には言わなきゃ分かんねぇのかな」


 爺は店を見回して空いた席を見つけると、俺にそこに座るように促した。俺が渋々座ると、向かいに爺も腰掛けた。周りの客はこちらを見ることなく談笑を続けていた。


「村人の平均的なギフトを、知らんわけではあるまい」爺が腕を組んで言った。


 淡々と心の内を見透かすように語る爺の姿に無性に苛立った。俺だって好きで最弱クラスの村人に生まれたんじゃねえよ…!


「村人は、C級スキルが3,4つ。これが現実だ」


 苛立ちをつのらせる俺を尻目に、爺はさらに続けた。


「村人じゃあな、B級があれば村中の噂になり、A級が出れば末代まで誇りになる。S級なんて持ってる村人はそれこそ伝説だ。SS、つまり特級だな。そんなの儂は見たことねえ。騎士クラスや冒険者クラスではA級なんてさほど珍しくないのにな。村人である以上、越えられない壁ってのが必ずあるんだよ」


「……あ?」


 黙って聞いていたが、俺はついに我慢がいかなくなった。越えられない壁…?そんなもの認めてたまるかよ!


「そんなことは知ってんだ‼だから俺が初めての特級村人になって…


「甘えんなクソガキが‼」


 ダン!と何かがけたたましく鳴った。俺は勢いを削がれ、気圧されたようにおし黙ってしまった。


 爺が、机に拳を打ち付けた音だった。


 談笑の響いていた店内もにわかにシーンと静まり返り、ただ店外の喧騒が空虚に響いてくるだけだった。


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