第2話 『うるさい爺さん』
「ふぁぁぁ……」
俺は体をだらだらと起こした。
「じーさん、あんまカリカリすんなよな〜早死にすっぞ」
どこかぼーっとした頭でとっさに浮かんだ憎まれ口をたたく。あれ?昨日も同じこと言ってたっけ?ま、いっか。
常連客はニコニコと微笑ましげに爺と俺を眺めている。こんなやり取りをもう半月ほど繰り広げているからだろう。傍から見たら本当に爺さんと孫のように見えているらしい。大きなお世話だ。
が、そんなことにはお構いなく、爺は眉間にこれ以上ないほどシワを寄せ、ズシズシと床を踏み締めて歩いてきた。
そして、俺の目の前でおもむろに立ち止まった。俺は一歩あとずさった。流石にゴツい顔をした巨駆の爺さんに仁王立ちでドンと構えられると、インパクトがあって少し威圧感を感じる………かもしれない。
「なんだよゴリ爺。仕事はちゃんとやってんだ。文句は言わせねえよ」やたらと高い位置にある爺の目を睨みつけて言ってやった。
実際、本当にちゃんと仕事はやっている。ほぼ毎日、開店一時間前に来て開店準備。そして配膳。などなど。バイトとしての役割は全てこなしているつもりだ。つかあの薄給でやってることを褒めてくれ。
「それとも何だ?ゴリ爺の料理スキルのLv上げを手伝えってことか?今更俺なんかが手伝ったところで大して変わんねーよ。Lv80もあったら十分だろ」
バイトに入りたての時はゴリ爺のスキルLvを上げようと奮闘したものだったが、1週間くらい頑張ったところで、俺が手伝おうと手伝わまいとLv上げに影響がないことを悟ったのだった。しかし、その爺のLvも最近Lv80から伸び悩んでいた。文字通り必要経験値が桁違いだったのだ。だが、Lv80といえば一応かなり高い方なので俺は別にいいかなと思っていた。見た目に似合わず料理めちゃくちゃ美味いしね。
「ユナなぁ、テメェ……………」
だが、俺の言葉になど耳を貸さず、ゴリ爺は耳を引っ張ってきて叫んだ。
「接客態度が悪い‼なんだ、その姿勢はよお‼ 今は常連客ばっかりだからいいが、たまには冒険者や聖騎士だって店に来るんだぞ⁉そうなりゃ儂の店も上に睨まれるし、テメェの人生にだって不利なこと分かってんのかゴラ⁉」
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