第1話 『邪竜の咆哮』
太陽神ラフィーを崇める、ルシュド王国。その国の中心街、王都からずっとずっと離れた、山に囲まれた田舎の村。そのさらに端っこの零細喫茶店、『ゴリ喫茶』
「ふあぁ……」
俺はあくびをした。場末の喫茶店『ゴリ喫茶』のカウンターで俺は目をつむり壁にもたれかかっていた。店に人が少ない時間、俺はいつもこうしている。常連の爺さん婆さんしか来ないこの店では、俺は好きなようにできるのだ。
―――――店長にバレさえしなければ。
「―――テメエ、ユナァ!!バイトがサボってんじゃねえぞゴラ!」
「うおぁ!」
店長の厳つい叫び声が店内に響いた。俺は情けない声を上げ、一気に半分ほど覚醒する。
コーヒーカップの中に波紋がふるふると浮かび上がった。看板の軒先に止まっていたカラスが耳障りな鳴き声を上げて飛び去っていった。
村人クラスらしからぬ2メートルはありそうな体躯から放たれる叫び声は、さながら邪竜の咆哮のようだ。彼の名は「ゴリ爺」。店長と言うより、魔物の長でもやっていそうな姿をしている。
曰く、ゴリ爺がは世界を終わらせられる。
曰く、ゴリ爺の逆鱗に触れれば何が起きたかすら分からず死ぬ。
曰く、S級勇者すら一睨みで戦意喪失させる。
爺にまつわる根も葉もない噂はあとをたたない。街では悪いことをした子供には、ゴリ爺の名前を出してしつけをするとか。そんなんだから店に客が来ないんだよ、と言ったことがあったが、拳骨一発でおしまいだった。
そんな喫茶店の一バイト。それが俺だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます