第3話:護衛役
今日もライラ一座の踊り子が身体を売っている。
一国の中心である華やかな王都でも、そこそこに繁栄している貴族の領都でも、寂れた田舎の村でも、ライラ一座のやる事は同じだ。
芸を見せ身体を売り金を稼ぐだけだが、相手の対応は様々だ。
大抵の男が夢中になって全財産を貢ごうとしてしまい、女房子供には憎まれる。
これは別にかまわないのだが、問題は犯罪者ギルドなどの闇組織だ。
「おい、おい、おい、おい、ここを誰の縄張りだと思っているんだ!
親分に無断で一座を開く奴はただではずまさんぞ!
昨日勝手に一座を開いた詫びに、今日は一日中ギルドの男に奉仕しろ。
千秋楽までの売り上げも八割を上納するんだ、ウゲェ」
王都や領都では、王国や領主に入城料と開業料を支払い、許可を受けて一座を開くのだが、大抵は犯罪者ギルドがあって護り賃を要求してくる。
犯罪者ギルドがのさばっている場所では、警備隊などに訴えても無駄だ。
大抵の犯罪者ギルドは警備隊と結託している。
だから相場通りの護り賃なら素直に払うのがライラ一座のやり方なのだが、中には阿漕な犯罪者ギルドや下種な犯罪者ギルドもある。
そんな所には情け容赦のない鉄槌を喰らわすのがライラ一座のやり方だ。
「一人も生かして帰すんじゃないよ、皆殺しにして街の掃除をするんだ。
ライラ一座はお世話になった街を汚して出て行くような礼儀知らずじゃないよ!」
嘘偽りのない、言葉通りの皆殺しだった。
ライラも歳と共に全盛時の速さや力はなくなったが、円熟した技術は衰えない。
いや、むしろ速さと力に頼っていた頃よりも強くなっているかもしれない。
そしてライラ以外の踊子達は、それこそ全盛時の速さと力を持っている。
特に容姿に恵まれず踊子としては人気のない女達は、その存在意義をかけて剣などの武芸を磨いていた。
「私もやってやる、ここで役に立って売春をしなくてすむようにするんだ!」
サリーは必死で犯罪者一味を殺していた。
踊子や売春婦としての存在意義は、それこそ毎日のように発揮することができる。
だが護衛役、殺人者としての存在意義は、敵がいなければ発揮する事はできない。
最近はライラ一座の裏の顔を知る犯罪者ギルドも増えていて、敵対する馬鹿も激減しており、売春婦として稼げるであろう金額を、護衛役で稼ぐのが難しいのだ。
「仕方のない奴だね、そこまで身体を売りたくないのなら、暗殺でもやるかい?
暗殺の仕事を受けて成功すれば、その稼ぎは売春よりも大きいからね」
「やります、ぜひやらしてください!」
サリーはは躊躇なく答えた。
サリーの基準では、いや、ライラがサリーに施した教育では、暗殺は尊い仕事だったのでサリーは即答したのだが、それが一般の基準とは違う事をサリーは知らない。
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