第2話:才能
ライラ一座がオレリオ王国でサリーという赤子をただ同然で買ってから、十三年の歳月が流れたが、今も一座は大人気を博している。
座長ライラの容姿は多少落ちたものの、その妖艶な魅力は容姿の若さでは対抗できない、特別なものがあった。
何より年々磨かれる性技の見事さは、客となった王侯貴族を狂わせる。
ライラほどの女ならば、国王を誑かし、後宮の主どころか一国の支配者にもなれるのに、ほどほどの金を手にいればあっさりと国を出るのだ。
「サリー、そんなに身体を売るのは嫌かい?」
そんなライラが、奴隷として買ったサリーに話しかけていた。
本当ならもっと小さなころから性技を仕込むのが一座のやり方なのだが、ライラは相手が奴隷であろうと、常にやりたい事を聞いてからやらせる。
だが単に拒否をする事は許されない。
性技を学ばないなら、それに代わる技術を学ばなければならない。
将来一座に利益を与える何かをだ!
「いやです、その代わり別の技術で金を稼ぎます」
「だったら今日こそ私の剣を避けきってみな!」
ライラはそう言ってサリーに剣を振り下ろしてきた。
その鋭さは、正騎士ですら避けられない速さだったが、サリーは見事に避けた。
避けただけではなく、手に持った短剣で逆撃した。
だがその剣は全くライラには届かなかった。
ライラの剣が変幻自在に軌道を変えて、サリーに襲いかかるので、それが怖くて深く踏み込めないからだ。
「くっ、今日こそ勝って見せる」
「素人が戦闘中に言葉を吐くと、覇気が弱まるからやめな」
「私は舌鋒を使っているんだ!」
「それは舌鋒ではなく泣き言だよ」
ライラは余裕綽々でサリーを追い詰めていくが、痛めつけているわけではない。
ギリギリまで追い込む事で、サリーの潜在能力を引き出しているのだ。
気力の尽きるところまで、精魂尽き果てるまで追い込んで戦わせる。
そうする事で初めて最短で潜在能力を引き出すことができる。
時に心臓が止まるほどの猛特訓を繰り返さなければ、性技の訓練に変わる技術を身に付け、一座に利益をもたらすことなどできない。
「どうだ、サリー、今からでも踊り子にならないか。
あんたの美貌と才能なら、今から始めても大陸一の女になれる。
女の技を使って、大陸を手に入れる事だって可能だよ」
ライラがサリーを誘惑するが、サリーはそんな誘惑には負けない。
確かに性技の訓練の方が楽だしケガもしない。
だが公平なライラが教えてくれたのだ、サリーが攫われ売られた子供だと。
明らかにいわく付きで、買わなかったり警備隊に捜査を依頼したりすれば、一座を皆殺しにされかねなかったから、助けるために仕方なく買ったのだと。
本当の両親が愛し探してくれているのなら、売春婦になる事はできない、そうサリーは思っていたのだ!
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