二節 「彼女のためにできること」

 北海道の風は、一人の僕をより孤独にさせる。

 どれだけ走ったのだろうかすらわからない。

 僕は知らない土地で一人、雪の上に倒れ込んだ。

 そんな結末ってあるだろうか。

 僕は何のために旅をしてきたのだろう。何のために新しいことをしてきたのだろう。

 急に馬鹿らしくなってきた。

 もうどうとでもなれと思った。プツリと何かが僕の中で切れた。限界なんてとっくの昔に切れていたのかもしれない。

 僕はこのまま北海道で寒さに凍えて死ぬのもいいかと思えてきた。

「ちょっと待ってよー!!」

 遠くからそんな声が聞こえてきた。

 それは紛れもなく、ひーちゃんの声だった。

 追っかけてくるなんて思ってもいなかった。

「ちょっと待ってったら。話はまだ終わってないから」

「何? まだ言い足りないことがあるの?」

 僕は無愛想に答える。

 どうしても感情がコントロールできない。

「そうじゃないよ。彼女に対する大切な話の続きだよ」

「続きも何も、僕にはできることなんてないんでしょ?」

 僕はまた感情的になる。

「なんでそんなふうにとるかなあ。ホント思い込みが激しいなあ」

 一方、ひーちゃんは冷静だった。

「だってそっちが救えないって言ったんだろ」

「私は『救えない』とは言ったけど、『できることはない』とは言ってないよ」

「えっ、何かできるの?」

 僕はすぐに立ち上がった。現金だと思われてもいい。 

 僕にはまだできることがあるのだろうか。

「できるからこそ、私が追いかけてきたんでしょ」

 ひーちゃんは笑顔で僕を抱きしめてくれた。

「ありがとう。そして、あたってごめんよ」

「いいよ。私もちょっと言い方が悪かったね。ごめん」

 そうして僕たちは仲直りしたのだった。

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