二節 「約束」
北海道まではかなり距離があるので、私達は休みをこまめに取りながら足を進めた。
いつの間にか都会の景色は田園風景に変わってきていた。
コンクリートで舗装されていない道は少し歩きづらい。
今更ながらこんなにも歩いてきたのかと少し驚く。
きっと歩いていくということにも意味があるのだろうと私はなんとなく感じていた。
その間に私たちはたくさん話をした。
それは二人の距離をぐっと近づけた。私達は前まで以上に言葉を交わすようになった。
私達の関係はどこに向かうのだろうか。
彼にとって彼女は絶対的な存在だということはわかっている。
それでもどこかで期待してしまう。
彼はある時こんな話をしてきた。
人は元々善なる性質を持って生まれてくるのかそれとも人は生まれながらにして罪をおかしているのかひーちゃんはどちらだと思うと聞いてきた。
前者が日本の考え方の一つで、後者がキリスト教の考え方らしい。
私は「前者だと思う」と言った。
そうじゃなきゃ生きていくのが辛いから。私は基本的に物事をボジティブに捉えたいと思っている。
ポジティブに捉えていると、物事はいい方向に進むことが多い気がするから。
彼はしばらく考えていた。そうして、「ありがとう」と彼は言った。
この問いも彼の罪と何か関係しているのだろうか。
きっと物事は複雑に絡み合っている。
少しでも罪の償いの力になれているならいいなあと私は思う。
また別の日は、私から話を振った。
「これから何をしようか一緒に考えてよ」
私は今後の話をした。
それは今後も彼と一緒にいたいと思うからだ。
「いいよいいよ。ひーちゃんはどんなことが好き?」
「私は、歌うことが好き」
それは私の誰にも言ったことのない私の好きなことだった。
好きなことなど人と話すなんて昔の私には想像もできなかった。
今は、それができている喜びに心が弾む。
「そうなんだね。じゃあ今度歌聞かせてよ」
彼はまじめに聞いてくれた。
ただそれだけなのに、嬉しかった。
「恥ずかしいけど、いいよ。この旅が終わったら一緒にカラオケに行こうよ」
「いいよ。どんな歌声か楽しみにしてるね」
今後のことなんてどうなるかわからない。
この旅が終わったら私達はどうなってしまうのだろうかと少し不安なところもあった。
それでも私達は約束をしたのだった。
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