六章

一節 「未来」

 夢でも見ているような気がした。

 永遠も見つかり、病気も嘘みたいになくなっていた。

 あれほどまで切望していたことなのに、あまりにも一気に起きすぎて正直私自身まだ対応できていない。

 まだ現実感がない。

 それでも全ては本当のことだ。

 彼の言葉も医者の言葉も、何度も何度も頭の中で繰り返される。

 いつの間にか彼に思いっきり抱きついてきた。

 『落ち着いて』と自分に言い聞かせるけど、それはなかなか難しい。

 だって一番の望みが叶ったのだから。 

 やはり、永遠は本当にあった

 ずっと探していた永遠を私は見つけられた。 

 もちろん、私一人の力で見つかったわけではない。

 彼がいなければ、きっと見つけられなかっただろう。

 彼には感謝してもしたりない。。

 永遠ってこんなに暖かくて、心が落ち着くものなんだと思った。

 そして、私は光りを見つけた。

 これから先の未来という光りを手に入れた。

 私は生きている。そして、これから先も生きていける。

 もう死の恐怖に怯えなくていい。

 これから先も生きられると思うと、やりたいことは山ほどでてきた。夢だって描いていいのだから。

 今まで苦労してきたのだから、めいっぱい楽しんでやろう。

 私の人生はここからまた始まる。

「詩音くん」

 私は彼を呼ぶ。

「また旅を続けよう。今度は私が、詩音くんが探してるもの見つかるまで付き合うから」

 そう彼の旅はまだ終わっていないのだから。私のために寄り道してしまった。

 彼にも自分が求めているものを見つけてほしかった。

「それは頼もしいなあ」

 彼はそう言って笑った。

 頼られている感じがこそばゆかったけど、嬉しい。

「振り出しに戻ってきちゃったけど、次はどこに行く?」

「そうだなー。北海道でも行く?」 

「それは素敵。最北端目指しますか」

 私は元気よく歩き出した。

 彼との旅はまだまだ続くのだから。

  

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る