三節 「永遠とは」

「永遠が何かわかったよ」

 ひーちゃんはそう話し始めた。

 僕は期待と不安でドキドキしていた。

 ひーちゃんが納得する答えが出たのだろうか。

「永遠なことは、『人を思うこと』よ。ずっと探し続けていて、やっと心に響くことが見つかった」 

「人を思うこと?」

「そう、人を思うことに終わりなんてない。詩音くんがそれを証明してくれた」

「僕が?」

「詩音くんは、莉子さんがいる時も亡くなった後も変わらずずっと思い続けている」

「私も詩音くんを大切に思うほどに、永遠に近いものを感じていた。つまりは、大切な人のことを思うことが重要なことかな」

「でも、僕の場合は特殊だから」

「確かに、詩音くんの場合は、忘れない思い出や死として、深い傷となった。それは、大きなことだと思う。でも、小さなことに対しても真剣に人を思う気持ちはあるでしょ?」

「それはあると思う。人を思うときは、その人が幸せになってほしいと願う。それに大きい小さいもない。でも自分を思ってくれる人がいなくなったら、人を思うことは終わってしまわない?」

 僕はあえてひーちゃんのことを思って追求した。

 不完全なものではひーちゃんは納得できないだろうから。

「そんなことはない。人を思うことは思う人がいなくなれば、別の人へバトンのようにつながっていく。バトンを渡された人はまた別の人のことを思う。思うことは消えないよ。人は一人じゃない生きていけないし、誰かが誰かを思って生きている」

「なるほど」

「そうであるなら、人を思うことは変わらないでずっと続き、なおかつ完全なものよ。それって永遠と言えない?」

 確かに説得力のある話だった。

「うん、人を思うことは確かにどんなことがあっても消えないね。永遠と呼べるよ!」

「よかった。私はやっと永遠を見つけることができた詩音くんに出会えなければ見つからなかった。ありがとう、詩音くん」 

 彼女からは珍しく感情の高ぶりを感じた。 

 僕もすごく安心して温かい気持ちになった。

 電車はもうすぐ東京に着く。

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