二節 「電車内、永遠を探す」
僕たちは電車の中で、ひーちゃんが僕と出会ってから心が揺れ動いた瞬間をまとめていた。
通勤時間ではなかったので、人は少ない。
僕たちは四人がけの椅子に対面に座った。対面に座るほうが話がしやすいから。
ひーちゃん自身、心が動いた瞬間が永遠に近い気がするときと言っていたからだ。
少しずつ何かが見えてきていると言っていた。
それと同時にひーちゃんから質問があった。
それは「人はなぜ永遠を求めるのか」というものだった。
僕は少し考えてから、「自分が永遠じゃないとわかっているからじゃない?」と答えた。
自分が永遠じゃないからこそ、他のものに永遠を求めるのだ。
自分にはないからこそ、輝いて見える。ほしくなるのだ。
ひーちゃんは「なるほど」と大きく頷いていた。
こんな問いかけで少しでも何かわかればいいと思っている。
そして、心動いた瞬間をまとめることで、ひーちゃんにとっての永遠が何かわかるかもしれない。
僕も心動いた瞬間があったなと思ったけど、それは今は考えない。
まず最初の心が動いた瞬間は、僕と出会って旅を始めると決めたとき。
次は、僕の罪の告白を聞いた直後。
そして、永遠の話を僕にしたとき。
書き出してみると、色々わかることがあった。
まずは、一緒に行動してるから当たり前だけど、すべて僕が関わっていた。
あと、ひーちゃん一人ではあまり心が揺れ動くことが少ないこともわかった。
「ストレートに聞くけど、僕のことどう思っていた?」
ひーちゃんにとって、僕はどんな存在か聞いてみた。
ときめきもあったもんじゃないけど、今はそれどころではない。
もしこのタイミングじゃなければ、違った結果もあったかもしれない。
僕がひーちゃんに思い描く気持ちは間違いなく、恋だから。
そして、永遠に関することは、もしかしたら僕が鍵を握っているのかもしれない。
「うーん、最初は変な人だと思った。それから私に似てるかなと思った。同じように人には言えない悩みを抱えているんだろうなって」
「それで?」
「急に親近感が湧いてきた。そして信頼して、素の自分を出せるようになってきた」
僕は心は移り変わっていくものだと思った。
そして、そんなふうに思ってくれていて嬉しいと思う自分もいた。
「そして、今では大切な人」
「大切な人か」
もしかすると大切な人と何かの大きな出来事があると永遠を感じるのだろうか。
それではこの先どんなことを起こせばいいのだろうか。
僕には何ができるだろうか。
僕は頭をフルに使って考える。
ひーちゃんにはもうきっとあまり時間がない。
「莉子さんも詩音くんにとっては大切な人だよね」
「うっ、うん」
僕は急に彼女の話をされてびっくりした。
今はそのことを思い出している場合ではない。
その直後のことだった。
「あっ、ちょっと待って。私、永遠がわかるかも」
そう言って彼女は急に何かメモし始めた。
大切な人、死、忘れられない出来事、愛と次々に言葉たちが書かれていく。
「そういうことだったのね」
ひーちゃんはそこで手を止めた。
「何がわかったの?」
僕は早口で言い、ひーちゃんを見つめた。
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