五章
一節 「優先順位」
ひーちゃんの話を聞いて、瞬時に自分の罪の償いより永遠を探すことを優先しようと思った。
頭で考えるより体が動いていた。
それは彼女のことがあったからだ。
もう後悔なんてしたくない。
また同じ過ちを繰り返してはいけない。今度こそは絶対に。
今まで顔色が悪いときがあったのに、それを深く聞かなかった自分を責めた。
そこまで突っ込んでいいかわからなかった。僕たちの関係は曖昧だったから。
でも、そんなのただの言い訳だ。
僕は自分のことしか考えていなかったのだ。
罪の償いより大切なことはいくらでもあったのだ。僕は罪を償うことに囚われすぎていたのかもしれない。
彼女の気持ちを考えると、心が痛かった。
僕は一番そばにいるのに、何もしてあげなかった。話すら聞いてあげなかった。
こんなに思い詰めるまで、彼女を一人ぼっちにしていた。
そして、ひーちゃんがいなくなるのは嫌だと思った。
もはやひーちゃんはただの旅の同行人ではない。ひーちゃんは僕にとって大切な人になっていた。
もう大切な人が悲しむ姿を見るのは嫌だった。
彼女が自由に生きたいように僕は支えたい。
永遠を探したいと言うなら全力で一緒に探す。
それが僕のできる最大限のことだと今は思うから。
もちろん、衝撃的で心はぐらぐら揺れている。
まさか彼女と同じ病気を患っているとは思わなかった。
でも、僕はしっかりしようと体に力を込めた。
彼女のことでフラッシュバックも起こした。
それでも耐えた。
僕が弱気になったら、ひーちゃんは不安になる。
せっかく頼ってくれたんだから、しっかり全部受け止める。
僕はとりあえず東京に急いで戻ろうと話した。
歩いてではなくて、一番最短時間で行ける方法で行く。
東京なら最先端の技術の診療をすぐに受けられるから。
治療法はなくても、現状の病気の進行具合がわかる。
ひーちゃんは病気と告知されてから、病院に行っていないと言っていたから、尚更今どんな状態か心配だ。
ひーちゃんは、「それじゃあ詩音くんの旅が中断しちゃうからダメ」と言ったけど、僕はしっかり説明した。
病院に行ってこれからの先を考えてもいいことと、移動中にでも二人で永遠の話をできることを言い、僕はひーちゃんを説得した。
僕たちは急いで電車に乗り、東京に向かった。
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