四節 「行き先の決め方は?」
「ねぇ、詩音くん、次はどこに行くの?」
「そうだなー、どこにしようかな。ひーちゃんは、どこかいきたいところある?」
カフェを出てすぐのところで私達は話していた。
外にまで香るコーヒーの香りが心を和ませる。
彼はにこっと笑う。
その顔があまりにも無邪気で、可愛らしかった。彼は顔も雰囲気もかっこいいより可愛い方だ。
私はいつの間にか『ひーちゃん』と呼ばれるようになっていた。
距離のつめ方に少し驚く。
私たちは今さっき初めて会ってカフェで話をしたほどの仲だ。
今あれからあまり時間は経っていない。
こういうところが距離感のとり方がおかしいのだ。
でも、嫌な気分はしなかった。
それは彼の優しい口調によるものだろうか。
そして、そんなあだ名つけられたのは初めてだった。
いつも、『ひなちゃん』とか『ひなたちゃん』だった。
それが特別な気がして、私は少し嬉しくなった。
初めてで特別なこと。
それは、永遠に近づいた気がするから。
「もしかしていつも行き当たりばったりで決めてる?」
「そうだけど、何かおかしい?」
彼はそれが当たり前のように答える。
考え方は人それぞれなんだと実感した。
それを否定せず受け入れることも大切だ。
「いや、おかしくはないけど。私はついていくだけだから、詩音くんが決めてくれていいよ」
「じゃあー、広島にしよう」
「うん、わかったよ。今度もおいしいものが多いところね」
こんな話をしながら、私は彼が今まで訪れたところについて話を聞いていた。
彼の話はとてもおもしろかった。話を聞くだけでも刺激になる。
私の知らないことを知っている。
そうやって、知らないことに触れるうちに、ふとしたことで永遠に出会えるかもしれない。
私は、旅についてきて正解だったと思う。
ふと彼にいつか永遠の話をできる日が来るかもしれないと思った。
なぜそう感じたかはうまく言えないけど。
でも怖いという気持ちもある。
だって誰にも永遠の話をしたことがないから。
幸せのために永遠を求めることはおかしなことだろうかがわからない。
永遠などないという考える人も世の中にいる。その人たちはすべては変わり続けるし、すべてはいつか終わるし、すべては不完全なものだという。
でも、私は永遠は必ずあると信じて疑わない。
そう思いたいのには、しっかり理由がある。
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