二章
一節 「莉子?」
「
歩いていると突然見ず知らずの男の人が、私に声をかけてきた。
この距離感は、確実に私に声をかけている。
あとでよくわかることだけど、この人は人との距離感というものがわかってない。
無邪気にパーソナルスペースに入ってくる。
髪は黒でスッキリとほどよい長さ、身長は160センチある私より少しだけ高い。
黒いメガネをかけている。
色白で、病弱そうに感じられる。
実際に痩せている。
しかし、すごく驚いて目を見開いている。
私は観察するかのように見定める。
正直、第一印象はあまりよくはない。
「あのー、私は、お探しの莉子さんじゃないんですけど」
遠慮がちに声をかけてみる。
誰かと言葉を話す段階で、私はその人にとって理想の人物を演じ始めている。その人が求める受け答えを考える。
誰しも会話するとき人に合わせて演じている部分は多少はあると思う。
それが私の場合、相手の顔色を伺い全て演じているのだ。
私の名前は、
きっとこの人は人違いをしている。
しかも、かなり闇の深い人だとわかる。
即座にわかったのに、何故か会話してしまった。
「嘘だ。莉子だよね? 莉子じゃないなんてあり得ないよ」
困ったなあと私はカールした髪をいじる。
やっぱり話が通じない相手だったと少し後悔する。
なんで会話しちゃったんだろう。
逃げるように「だから、違いますから」と再度言った。
「もう永遠に、会えないなと思ってたのに嬉しい」
彼のその言葉にピクリと私の耳が動く。
私は『永遠』という言葉に反応した。
私は、永遠を求めている。
何が起きても変わらない完全なもの。
求めるのには、ある理由がある。
そして、この人といると、永遠を見つけられるかもとこの時直感で感じた。
なんでかなんてわからない。
こんなときは直感が大事だ。
「とりあえず、立ち話もなんですから、どこかお店に入りませんか?」
だから、私は先ほどとはうって変わってとっておきのつくり笑顔でそう切り出したのだった。
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