第54話 53.クラッカー耳痛きまで冬銀河

 53個目のお題は『クラッカー』

 これは、円錐形の頂点から飛び出している紐を引くとパンと大きな乾いた音がして、チープな紙紐や紙ふぶきが出たり出なかったりするあの『クラッカー』のつもりで出した。なので、リッツパーティーの食べるクラッカーではない。

 つばきファクトリーさんの「ハッピークラッカー」という曲が好きでよくかけている。待機中の車内ではかけることができないので、専ら部屋に一人きりのとき、このにぎやかな曲を聞いていると、自分が本当に一人なのだと痛感できる。環境が許せばMVやコンサートでの「ハッピークラッカー」を見る。僕はこの曲の振りつきも大好きだ。なんというかパーティー前の高揚した気分と、そのパーティーがずっと続くのではないかという期待感を、自分からは遠いものとして眺めていると、とてもリラックスできるからだ。彼女たちが明るければ明るいほど、楽しければ楽しいほど、微塵の陰も感じさせないほど、天真爛漫であればあるほど、僕とはまったく無関係な彼女たちの存在が、世界を救っているのだという気分になる。

 僕はその対極にいる。

さて、俳句だ。

 コンクリートの冬クラッカーの音響く

 クラッカーコンクリートに響かせ冬

 冬ざれやあちこち垂るゝのクラッカー

 クラッカーの紐指に巻く十二月

 皸に固く巻くクラッカーの紐

 極月を飛び越し損ねクラッカー

 年惜しむ指の力やクラッカー

 短日のゴールテープはクラッカー

 銃持たぬ町を寒夜のクラッカー

 クラッカー即座に細る霜夜かな

 初霜の窓辺に空のクラッカー

 枯原へ戯れに撃つクラッカー

 クラッカー携えて来し冬の海


そして表題句


クラッカー耳痛きまで冬銀河


今回はこれで。

 

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