第10話
久しぶりに通った道は、なにもかもあの日のままだった。そしてあいつもあのままだった。相変わらず咲いている場所はひっそりとしているが、ひまわりはピンと背を伸ばして太陽を見ていた。それは初めて会ったときと全く同じだった。
私は挨拶もせずカメラを構えた。その日は休みだったので一日中ひまわりと一緒にいた。そこで初めて、あいつは一日中同じ表情をしているわけではないと知った。嬉しそうな顔、悲しそうな顔、悩んでいる顔、切ない顔。人間のようにくるくる表情が変わった。恋愛をしたことがあるから分かる。私も好きな人のことを思っているときにそうなる。あいつの太陽に対する想いは強かった。私なんかが太刀打ちできるものでは到底なかった。
それに気づいたのはひまわりを撮り始めて6日がたった日だった。
私は撮るのをやめた。
もう充分だった。
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