第45話

終業のチャイムがなり放課後の始まりを告げると教室から人は段々と居なくなった。

部活に行く者帰宅する者友達と遊びに行く者。

教室に殆ど人が居なくなってから湊は席を立ち教室を出た。

殆どの人が玄関の方に向かい歩く中湊は玄関とは逆の方向に足を進めて居た。

しばらく歩くと旧校舎の扉にたどり着いた。

特に施錠などはされておらず自由に行き来出来るのだが旧校舎に人が来るのは稀な事である。そのまま扉を開け湊は歩き続け、旧校舎の1番奥にある女子トイレに入った。

ここなら誰も来ないだろうそう思い鏡の前に立ち眼帯を外しゆっくりと目を開ける。

鏡に映る自分の目が赤く映るのが見えるが痛みは襲って来なかった。


『綺麗な赤だよねぇ』


頭の中でアウァリティアに話しかけられる。


「今普通に見えるのはなんで?」

『ん?それは君の目から脳に伝わる情報を僕が引き受けてるからだよ』

「やたらと見えたあれを?」

『そ、別に君が見る情報全てを僕で止める事も出来るよ』


そう言うと急に視界の半分が黒くなりなにも映さなくなった。ああこうゆう事かと理解する。


『納得したみたいだね』


言葉にしてない事でも脳内で考えただけで知られるらしい。正直に言うとても面倒くさい。


『面倒くさいなんて思わないでくれよ。別に僕は君の邪魔をしたいんじゃ無いんだからさ』


半分になっていた視界が開ける。


『僕は君に勝って生きてもらわないと困るし君は僕の力が無いと戦えないだろ?』


悔しいけどアウァリティアの言う通りだった。アウァリティアの力が無ければ昨日ブルーダに殺されていただろう。力を貸してもらうのは助かる。だが、


『赤い目を治して欲しい。でしょ?残念ながらそれは出来ない』


考えている事を知られるのは本当に嫌だな。


『理由は1つ元から黒い色を赤に変えたのなら赤を黒に変えるのはできたかもしれない。けどこれはちがう。君の目を僕の目と交換したんだ。僕の目は元から赤だがら黒には出来ないつまりそういうことなんだ』

『君の目を治す方法は1つあるよ。僕と契約しないかい?そうすれば君の目は黒に戻るよ』


なにも言わず考えず眼帯を付ける。


『それが今の君の答えだね。まぁいいよ僕は気長に待つよそれより君は今からどうするんだい?』

どうするってそれゃ家に帰るしか方法はないだろう。

『1人で帰るのかい?』

それはそうだろう。今一緒に帰る人は居ないんだから。

『それはそうなんだろうけど無事に帰れるの?』

流石に円卓の奴らも人通りのある時間帯に襲っては来ないでしょ。昨日みたいに周りを破壊する可能性だってあるし。

『私達は周りを気にしないよ?ミルカもブルーダもたまたま夜に近くて人通りが少なかっただけ。黎明は人目に着くのはまずいって言ってたけどそれは関係のない話だよ』

どういうこと?

『別に君を殺せば世界は元から君達が居なかった事になるから見られたところでって感じなんだよ。現に昨日のブルーダとの戦いで爆発やらなんやらしてたけど教室で誰か話題にしてたかい?』

言われてみれば確かに誰も昨日の爆発の事を話題には出していなかった。公園が1つ使い物にならなくなったのにだ。

『つまりそうゆうことなんだよ。集団で君が帰ったとしてその時に君が殺されたとしてもだれも驚かないし誰も悲しまない、別に君ははなから存在してない事になるんだから』

『人目があろうがなかろうが関係ないよムラキみたいに不意打ちで殺されることもあるかもねそれを踏まえた上で聞くよ。1人で帰るの?』


無言でトイレを出る。薄暗い廊下がいつもより不気味に見えたが気にせず足を前に運ぶ。


『君は死ぬのが怖くないのかい?』

「何言ってんの。死ぬ事よりも紅葉を失う事の方が怖いね」

『君達は昔からそう言うよね。自分よりも大事な人って僕には分からないね』

「そ、分からないなら分からないんでいいんじゃない?私はあなたの事を分かりたくないし」

『冷たい事を言うんだねぇまぁ僕は君の生き様を近くで見させて貰うよ』

「できるだけ黙って見ててね」

『言われなくてもそのつもりさ、周りに円卓が居ても僕は教えない、不意打ちで死ぬような攻撃が来た時にはさすがに教えるけどね』

「死なれたら困るもんね」

『分かってるじゃん。で、僕も景色見たいからさ眼帯を取ってくれないか』


言葉を無視して歩き続ける。アウァリティアは何も言わず自分の足音と部活動の掛け声だけが耳に響いていた。


玄関にたどり着いた時黎明と目が合ったが何も会話はしなかった。学校では教師と生徒の関係でそれ以上でもそれ以下でもない。無意味やたらと関わりを持つべきではないそう言う判断から来るものだった。

金曜日と同じ帰り道が紅葉が居ないただそれだけで静かだった。

空を飛ぶ鳥や自由に歩き回る野良猫、季節によって変わる道端の花に目が映らない。

紅葉はそれらに子供のように目を奪われそんな紅葉を見るだけで湊も充実していた。

カラフルで騒がしかった世界が酷く退屈に見えた。


「おねーちゃんひとり?」


どこかで聞いた声で名前を呼ばれる。声のした方を見ると赤い髪の少女が手摺に腰掛けていた。


「1人のところを狙って来たって訳?暴食のクウカ」


クスクスと笑うと手摺から離れ目の前まで近寄ってきた。相変わらず動く度に流れる赤い髪の毛が綺麗だった。


「別に今日は殺しに来たんじゃないの1つお願いしに来たの」

「お願い?」

「そ、どうせ暇でしょ?着いてきて」


クウカから殺意や敵意は感じ取れず特にアウァリティアも反応しないため警戒しつつクウカに着いていく事にした。

しばらく歩いて辿り着いた場所はファミレスだった。

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