第33話
赤い髪の毛の少女が入ってきた時、背中に寒気が走り、咄嗟に手を地面に向け方なの名を呼ぼうとしたが、入ってきた少女が誰なのかを理解し方なの変わりに少女の名を呼んだ。
「あれ、のむかちゃんどうしたの?」
「中々帰って来ないから、その…見に行ってきてって言われて…」
俯き意識してなければ聴き逃しそうな小さい声だった。それゃ様子見にトイレに行ったら今日会ったばかりの人が変に構えている。それゃ怖いよね。
「ごめんね、ちょっと友達と連絡しててね」
「うん、先に行ってるね…」
のむかはそう言うとトイレを後にした。1人になったトイレの中で、やたらと早くなった鼓動を落ち着かせていた。
「今…一瞬…」
のむかがトイレに入ってきた時一瞬、のむかがクウカに見えたような気がした。赤い髪色、身の丈など似ている部分はあるものの、雰囲気は別物だし、昨日付けた目の傷は無い。
一般人を勘違いするなんて…。勘違いした自分に嫌気がさす。
「とりあえず家に帰ろう」
そう呟き湊もトイレを後にした。
机に戻るとデザートを更に追加で頼んだのか空の容器が増えていた。町林さんも2杯目のコーヒーを頼んだのか息を吹きかけ冷ましていた。
「すいません長いこと席を外してしまって」
「いえいえお気になさらないでください、のむかから聞いてますよ。お友達と連絡をしていたそうじゃないですか」
「ええ」
町林は冷ましたコーヒーを一気にグイッと飲み込み、少しコーヒーの残ったコップを机の上に置いた。
「お友達と何かご予定が?」
「ええ、この後待ち合わせを」
「遊び盛りですものね、僕も若い時は良く遊んでましたよ」
残ったコーヒーを飲み空のコップを机に置く。
「僕達はまだここに残りますが、立花さんはどうします?」
そう言うと呼び出しボタンを押し、店内に電子音が響く。更に追加で注文するのだろうか?のむかちゃんはルンルンでメニュー表を眺めている。あの小さい体のどこに吸収されているのだろうか。
無尽蔵の胃袋、まるで暴食。そう考えた時再びのむかちゃんの姿がクウカに見えた様な気がしたがそんな事は無く、そこには目を輝かせメニュー表を見つめるのむかの姿しか無かった。
「私は友達との予定があるのでここで帰りますね」
「ではここでお別れですね、今日はのむかを見つけてくださってありがとうございます」
町林がそう言うとメニュー表から目を離し、
「お姉ちゃんありがとう…」
少し照れくさそうに言い、直ぐにメニュー表で顔を隠してしまった。
やはりこんなに可愛い子がクウカな訳はない。
「今日はこちらこそありがとうございました」
そう言い席を立ち2人に軽く頭を下げお店を後にした。
店を出た後はひたすらに人の多い所を選んで歩くようにしていた。
すれ違う人を横目にダメもとでレイメイに電話をかける。コール音が3回ほど鳴ったところで、
『もしもし湊さん今どこに居ますか?』
繋がった。レイメイは無事で居たらしい。ならば何故今まで何も連絡が無かったのが気になったが今はそれ所では無かった。
「今は…」
何か目印になる物が無いか当たりを見渡す。店舗の名前を言ったところでお互いここに来たのは初めてだったため、余り役にはたたないだろう。
「今とりあえず私達が最初に居た場所、休憩所に向かってる」
『分かりました。私もそちらに向かいます。』
「そっちは何処にいるの?」
『私は今外に居ます。連絡が中々付かなかったですし、その建物の中から気配が消えていたので外に探しに行ってました』
「気配が消えていた?」
私はずっとこの建物の中に居たはず、うろちょろはしていたけれど、ずっと居たはず。もしかすると、4席かクウカの能力?
「ねぇレイメイ、4席かクウカって気配を消したりする能力って持ってたりする?」
『気配を……たり、…や……を……たりす……──────』
「え?なんてレイメイ?おーい」
『ガチャ、ツーーーー』
急に声が途切れたかと思えば、電話は切れ電子音のみが流れていた。
「なんで?急に…」
もう一度レイメイに電話をかける。無意識の内に休憩所に向かう足取りは早くなる。
「出ろ!出ろ!!出ろ!!!」
そんな湊の願いも虚しく耳元に聞こえる音は感情の無い電子音。これはもう恐らく円卓からの攻撃を受けているのは間違いなかったが、それが誰からの攻撃なのかはまだ分からなかった。
「わっ!」
再び電話をかけようと携帯の画面を見ていると、何かにぶつかりその勢いで床に倒れてしまっていた。
え、この人混みの中盛大に倒れる!?普通?え?スマホに夢中になってたとはいえ、え?ぶつかって倒れる?やばい絶体周りから変な目で見られる…って事よりもぶつかった相手大丈夫!?
ハッと頭を上げぶつかった物を見ると、薄い緑色の髪の毛をした青年がその場に立っていた。青年は倒れた湊を見ると、
「すいません大丈夫ですか?」
と、湊の不注意でぶつかったにも関わらず先に謝りに、左手を差し出してくれていた。
以外にも青年以外の視線は感じず、偶然誰にも見られてなかったのか周りの人達は2人に目もくれず行き来していた。
「あ、すいませんこちらこそ前を見ずにぶつかってしまい」
青年の言葉と行動に甘え、差し出された左手に手を伸ばす。
「いえいえお気になさらず」
青年は笑みを浮かべそ湊の手を引き、立ち上がるのを手伝ってくれた。
「変わった刺青をしているんですね」
「え?」
差し出した左手に付けていた手袋は何かに切り裂かれた様に地面に落ち、包帯も同じように裂かれヒラヒラと地面に落ちていった。
あらわになっている手の甲には4という数字が浮かんでいた。
「立花湊さん。何か違和感感じませんか?」
「違和感?」
青年の顔は先程までの優しさの入った笑みとは違う、愉悦の混じった笑みを浮かべていた。
違和感は色々とあるが今1番感じるのは、
「体が動かないのはあなたの仕業?」
左手があらわになった時、咄嗟に刀を出そうとしたが立ち上がった時の状態から体が、指先1つ動かなくなっていた。無理に動かそうと思おうものならば骨や神経が無事では済まないという事は瞬時に理解した。
「ええ、私の仕業ですね」
「それと…」
転んだ時に感じた違和感。この人混みの中誰一人転けた私を気にしなかった事、気にしないと言うよりは見えていないような。
「私達の事が周りから認知されていない事かな」
「正解です」
「ついでに携帯の電波とかも?」
「ええ」
青年は愉悦混じりの笑みのまま頷く。体は以前動く気配は無かった。
「そう言えば自己紹介がまだでしたね。私は罪と感情の十一円卓第4席楽担当楽のムラキです」
そう言うと右手を差し出し握手を求めるような素振りを見せた。
「あいにくこの状態だと握手すら出来ないのだけれど」
「おや、それは失敬」
右手が解放され自由を手にする。その瞬間、
「しだれ桜!」
こんなに大勢の人が周りにいて、人目の着く場所でしだれ桜を呼ぶのは普段なら絶対しないが、今は円卓の能力で周りから認知されていない。そんな状況の今なら。と思い影から刀を呼び出したが、呼び出された刀が握られる事は無かった。
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