第25話
食事を食べ終えたレイメイは食器を片付け再び部屋に帰ってきた。
「お腹も膨れた所でこれからの予定について話しますか」
食事を食べ終え満腹になった事で、少しだけ睡魔に甘い言葉で囁かれウトウトしていた湊だが、睡魔をはねのけ目が覚めていた。
「とりあえず、今日の夜湊さんさんにはミルカと戦って貰います」
「戦うのは良いけど場所は分かるの?」
「昨日と同じ場所で良いと思いますし、なんなら夜になればミルカの方から来るはずですよ」
レイメイの言葉に湊は首を傾げる。
「なぜミルカの方から来ると?」
「ミルカからすれば1番弱い状態が今ですから」
「負傷してるからって事?」
レイメイは首を傾げる振る。
「納涼を何も得ていない今が倒しやすいからですね」
「能力?」
レイメイはコーヒーを1口啜り答える。
「ええ、円卓は全員何かしらの能力を有しています。例えば」
レイメイは人差し指で部屋の隅のダンボールを指さす。湊は指さしたダンボールに視線を移す。
「行きますよ」
レイメイのその言葉と同時にどこからともなく現れた黒い影がダンボールを斜めに切り裂く。
レイメイの方に視線を戻すと指を斜めに動かしただけだった。
「湊さん、そこに置いてあるクッションを私に投げてくれますか?」
レイメイがそこと言った場所にある緑色のクッションを手に取りレイメイに投げる。
湊の手を離れレイメイの元へと飛ぶクッションはレイメイに当たる直前に現れた時黒い影に阻まれた。
影に捕らわれ空中に留まるクッション越しに、
「これが私の能力です。影を自由に操ったり、影の中に物をしまえるなど便利な力ですよ」
そう言うと、クッションを掴む影はゆっくりとクッションを飲み込み、レイメイの影へと帰っていった。
「へぇー便利荷物持たなくて済みそう。即売会で欲しい力だね」
レイメイはメガネをクイッとあげ、
「実際この力には随分助けられています。何本ものスポーツドリンクや戦利品をしまえますからね」
「雪音はどんな能力持ってるの?」
「ん?私?私のはねー」
雪音はそう言い、手のひらに直径50cm程の雪の結晶を生成した。
「氷?」
「そう、氷雪を扱える能力だよ」
手のひらの雪の結晶を天井に投げつけると、雪の結晶は砕け数多の小さい結晶が部屋に舞落ちた。
「結晶以外にも武器も作れるから便利よ」
「はえー本当に便利だね」
「ミルカの変身も能力をですね」
レイメイの方に視線を戻し、
「私はどんな能力を使えるの?」
期待の眼差しでレイメイを見る。
影、氷雪、変身と便利な能力が続いてる中自分に与えられた能力が気になるのは当たり前だった。
炎を操る力?それとも風?はたまた瞬間移動が出来たりだとか、期待に旨が膨らむ。
「湊さん強欲の力は奪う力です」
「奪う?」
レイメイの言葉に首を傾げる。
「そのままの意味で倒し相手の能力を使えるようになる力です」
「てことは…」
「お察しの通り円卓の誰かを倒さない限りは無能力ですね」
「くそ雑魚では?」
湊の言葉にレイメイは黙って頷く。
「ええくそ雑魚ですよ。それゆえミルカは今の湊さんを狙うのです」
無能力。まぁ、うん。身体能力は高いし武器もあるから良いけど…え?能力無しで化け物と戦うの?そりゃ過去の生まれ変わり達も勝てないよ。能力者に無能力じゃ勝てないよ。
「まぁ、でも奪うって事はミルカを倒せばわたしもミルカみたいに色んなものに変身できるってこと?」
レイメイは頷く。
「ええ、奪う力なのでミルカの変身の能力を使えるようにはなりますが、今のままだとミルカの能力の内1つしか使えません」
「どうゆうこと?」
「強欲と正式に契約するまでは奪う力は使えませんので」
湊は反対方向に首を傾げる。
「どゆこと?強欲と契約するまでは奪う力は使えないのに、1つまでは奪えるの?」
「えーとですね、円卓全員が奪う力は保有しています。倒した円卓の力の内1つを使えるようになるのです。強欲の能力はその奪う上限を無くし倒した円卓の能力全てを使えるようになる力です」
「要するに今の私は奪う力は使えないけど、円卓全員が持つ能力1つを使えるようになる力は持ってるってこと?」
レイメイはうなずきコーヒーを啜る。
「なら、強欲と契約すれば良いのでは?全て奪えるようになった方が強そうだし」
レイメイは首を振りコーヒーをそっと置く。
「強欲と契約すれば湊さん。あなたの人格は乗っ取られ、私と雪音で強欲を止めるしか無くなります」
「?」
「なぜ?」
「強欲は円卓を破壊するために動いますが、その結果湊さんの体、自分の器が壊れることさえも気にしません。破壊しか産まない化け物になります」
「要するに契約しちゃダメって事ね」
「そういうことです」
「なるほど、ってことは私はミルカになんの力も無しに勝てってことで、そこから円卓を順番に倒して力をつけていけってこと?」
「そういうことです。それに湊さんあなたには力は既にあります」
「これの事だよね?」
影から枝垂れ桜を呼び出す。
「私がミルカに勝てる可能性は?」
「十分にあると思いますよ。何も知らない状態であそこまで戦えたんです。それに」
「それに?」
「次は守るべきもの、クレハさんの事をを気にせずとも戦えます」
「そうだね、紅葉は次は傍にいないもんね」
枝垂れ桜を影にしまい、視線をレイメイに移す。
「わたしがいない間紅葉はだれが守るの?」
「2人がいない間は私が家にいるし、そもそもこの家はわたしとレイメイの結界が張ってあるから核爆発でも起きない無い限りは安全だよ」
雪音に向いていた視線をレイメイに戻す。
「なるほど、てことは何も気にせず全力で戦えるのね」
「そういうことです」
「ねぇ、今すぐミルカとは戦えないの?夜まで待つ必要って何かあるの?」
2杯目のコーヒーを啜り、机に置いてあるお菓子の個包装の物を1つレイメイは口に入れる。
そして飲み込んでから、
「人目に着きたくないですからね、今のご時世何かあれば直ぐにネットで広がりますし」
「なるほど、決闘なんかしてたら直ぐに通報するされるしね」
「そういうことです」
「なるほどね、なら夜まで何するの?」
「ん?ひたすら休んでください」
「休む?」
「ええ、湊さんさんの身体は絶好調では無いですからね、昨日の傷も塞いだだけで治った訳ではありませんし」
レイメイの言う通り、傷は血は止まっており、指の骨折も物を握ったり持ったりする分には痛みは感じないが、殴ったりすれば話は別だろう。
全力を出せるのも時間制限付きというわけらしい。
「なので、夜まで部屋で横になるか何か気分でも落ち着かせておいてください、紅葉さんの部屋でもいいですし」
「なら紅葉の部屋に居るよ。入る時はノックしてね」
「ええ、分かりました」
席を立ち部屋を出ようとドアノブに手をかける。
がドアノブを回す手が止まる。
湊は振り返りひとつ尋ねた。
「御手洗どこ?」
朝食を食べたことで湊のお腹の中は刺激されていた。
「廊下の突き当たりだよ」
「ありがとう」
そう雪音にお礼を言い、湊は部屋を出た。
部屋に残された2人は、しばらく静かな時間を楽しんだ。
「なら私もここでゴロゴロするからレイメイ出てって」
しぶしぶ立ち上がり、
「雪音さんたまには自分の部屋で休まれては?」
「部屋でゴロゴロする時は寝る時だけと決めてるの、日中はリビングでゴロゴロする派なの私は」
ため息をひとつつき、
「分かりました。何かあったら呼んでください」
そう言い残しレイメイも部屋を後にした。
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