第16話
レイメイに案内されリビングのソファに座る。
雪音は隣の部屋に紅葉を寝かせに行き、レイメイは「コーヒーでも入れます」と言いキッチンに消えていった。
湊は1人になった部屋で少し緊張の糸を解いた。
疲れがどっと押し寄せ、傷を負った場所が傷んだ。
ふくらはぎはえぐれ、両手の指の骨はヒビがはいり折れ骨が皮を破っている。レイメイに応急処置されていると言っても痛いのには変わりなかった。
「傷は大丈夫?」
紅葉をベッドで寝かせてきた雪音がアイス片手に部屋に入ってき、近くにあった椅子に座った。
「大丈夫じゃないです」
「だよねぇ。これ半分いる?」
と、半分にわけられるアイスを差し出される。分けてもらえる気持ちは嬉しいが今のこの手では何かを持つことはできない。
「お気持ちは嬉しいですが…」
手のひらをヒラヒラと動かす。雪音は察したのか、
「あー、治ったらまたあげるね」
そう言い、2つとも食べ始めた。治ったらってこの怪我はそうそう治らないだろうに。
雪音はその後無言で2つアイスを食べきった。
アイスを食べ終わる頃、レイメイがコーヒーを持って部屋に入ってきた。
「お待たせしました」そう言いそれぞれの目の前にコーヒーを置く。
湊の向かいのソファにレイメイは腰を掛けコーヒーを1口飲み一息ついた。
「さて、どこから話しましょうか」
レイメイはコーヒーを机に置き湊の目をじっとみた。湊は目線をそらさずに
「まずは2人の目的お私達を助けた理由を聞きたい」
「ん、なら私から言うね。私の目的は円卓の第2席を殺すことかな。それさえ達成出来ればいいよ」
そう言い終え、雪音はニコッと笑う。
「なんで2席の命を?」
雪音の顔から笑みが消えどこか悲しげな表情を浮かべる。
「仇かな」
耳を澄まして無ければ聞き逃す程の声で雪音は呟く。寂しいような悲しいような表情を浮かべ目線はどこか遠くを眺めているようだった。
「仇…」
オウム返しのように雪音の発した言葉を、気付けば湊は呟いていた。誰か大事な人を亡くしたのだろう。
「さ、次はレイメイの番だね」
先程までの曇った表情は無く明るい笑顔を雪音は浮かべていた。
雪音からバトンを渡されたレイメイはコーヒーを一気に飲み干した。
「私の目的はこの円卓を終わらせることです」
「終わらせる?どういうこと?」
「言葉の意味そのままですよ」
訳が分からなかった。円卓を終わらせる。円卓の終わりとはなんなのだ?そもそも罪と感情の十一円卓がなんなのかすら未だに分からない。
「そもそも、罪と感情の十一円卓ってなんなの?」
湊の質問に対して反応を示したのさ雪音だった。
「え!?円卓についても話してないの!?」
驚きの顔でレイメイの方を見る。
「えぇ、あの場で話すには少し長くなりそうでしたので」
「今とりあえず手短に円卓について話したげたら?」
そうしますかと言うかのようにメガネをクイッとかけ直し、
「円卓とはとある男性2人によって作られました。1人の名はルノ。もう1人の名はヤウこの2人が世界の法則を破り生み出したのが私達11人の子供。そしてそれが十一円卓です」
頭がパンクしそうだった。
男女が子供たちを作ったのならまだ理解はできるが、レイメイの口から発せられたのは男性2人だった。そこでもう既にパンク仕掛けていたのに追い討ちのように、11人の子供達とくれば脳は理解を拒む。
拒むと言うよりも処理が追いつかない。
「待って待って待って」
気が付けば口から声が発せられていた。頭の中で浮かんだ言葉がそのまま口から外に出ていったようだった。
「え?え?え?男2人?が産んだ子供たちが十一円卓?え?どうゆうこと?」
レイメイは表情を一切崩さず湊の質問に答えた。
「ルノは超能力が使えヤウを女性に変え子供たちを11人作りました」
新たに言葉が追加される。超能力とTS?は?完璧に脳はパンクする。脳は何か違うものを取り入れようと、目の前のコーヒーを手に持ち一気に口に流し込む。
ほんのりした苦みとコーヒーの香りが口いっぱいに広がり熱さで口の中は火傷をする。
それでも、味覚、嗅覚、痛覚の感覚を刺激することで湊の脳は何とか平常運転に戻ってくる。が理解はできないままだった。
「なるほどよく分からないけど、その2人から生まれた子供達が十一円卓って事なの?」
「そうなりますね」
この際超能力やTSは一旦どこかに置いておいてとりあえずの着地点を探す。
「なるほど。んでどうして円卓を終わらせたいの」
とりあえずの疑問を投げかける。円卓が子供たちで血清されているとするのなら、円卓のメンバーは兄弟達だろう。雪音の目的もだが兄弟を終わらせたいとはなにがあったのかが気になる。
「ある人との約束です」
「約束?」
「ええ」
そうレイメイは一言答えた。
「少し長くなりますが円卓を作った2人のお話でもしますか」
そう言いレイメイはルノとヤウの話を始めた。
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