第10話

暗闇の中木々を縫うように湊は走った。

段々と暗闇に目が慣れていき山を下るスピードは少し早くなっていった。


「ごめんね」


耳元でか細く囁かれる。


「気にしないで、それよりスピードあげるけど大丈夫?しんどくない?」


返答はなかったが頷いたのだけは分かった。


「了解、舌噛まないように口は閉じててね」


そういい更に山を下るスピードを上げた。



山を下り続けていると木々の隙間から小さな光が見え、そこに迎い走った。光は近付くにつれ大きく見えてきた。

最後の木を抜けると少し広い駐車場の様な場所に出た。

だいぶ山を下っていた様に思えたが、街の光はまだだいぶ先にあり、自分たちが今いる場所はまだ山の中だった。


街灯の下で紅葉を降ろし足の傷を確認した。

血はもう止まっていたが、足首が赤く腫れていた。


「足大丈夫?」


「うん、痛いけど大丈夫かな」


「それよりも紅葉えらい?」


「え?」


と、紅葉は分からない様子で答えた。


「さっきから呼吸が荒いし、汗も凄いかいてるよ」


「え?」と紅葉は言われて初めて気付いたみたいな反応をし、額を手で拭って


「あ、ほんとだ…どうしたんだろ」


「とりあえず街に帰ったら病院に行こう」


「うん」


「湊制服ボロボロだね」


「ん?」


自分の制服を見てみると枝に引っ掛けたりしてたのか、所々避けたり破れたりしていた。


「んー、まあ換えがあるし大丈夫かな。そろそろ動いてもいい?」


「うん」


と紅葉はその場で立ち上がろうとしたが、直ぐに湊に邪魔をされた。


「抱っこしていくからまた座って」


「ん、ごめんまたお願い」


座った紅葉を抱っこしようと近付いた時、すごく嫌な気配を自分たちが来た方向から感じた。


「?湊どうかしたの?」


「なんでも…ないともう」


自分たちが来た方向に目をやるとガサゴソと木が揺れていた。緊張が走りじっと凝視すると木々の中から猪が出てきた。

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