第4話

「うわ、今日人多いなぁ」

食堂に着いた湊は呟いた。そんなつぶやきに対し「席が埋まる前に早く座ろう」と紅葉は隅の方のまだ人が少ない机に向かった。

机の上にある「空席」と書いてあるパネルをひっくり返し「使用中」にし2人は食堂のおばちゃんの元へ向かった。


食堂のおばちゃんの元には何人かの列ができていた。その最後尾に並び順番が来るのを待った。


「湊は今日何食べるの?」


「ん?カレーうどんかな。」


「え?カレーうどん?制服だよ?飛んだら終わりだよ?」


「気をつけて食べるから大丈夫でしょ。紅葉は日替わりランチ?」


「勿論!今日の日替わりランチはなんとハンバーグだよ!」


と言い日替わりランチの書いてある掲示板を指さす。食堂の掲示板にはその日の日替わりランチ等が記載される。その掲示板のど真ん中に大きくハンバーグランチと書かれていた。


「しかもただのハンバーグではなくて、いつもより1.5倍の大きさのハンバーグなんだよ!」


「食べ切れるの?」


「大丈夫!お腹は十分空かせてあるわ」


紅葉はよっぽどハンバーグが嬉しいのか、その場でぴょこぴょこと跳ねた。

そんなやり取りをしていると紅葉達の順番が来た。


「何食べるんだい?」


「おばちゃん!日替わりランチ!」


「あいよ日替わりランチね。250円だよ」


250円をおばちゃんに渡し、紅葉は日替わりランチを受け取った。

「席で待ってるね」と紅葉は言ったが「先に食べてていいよ」と返した。紅葉は「んー待ってるね」と言い席に戻った。


「はい、次の子は何食べるんだい?」


「カレーうどんお願いします」


「あいよカレーうどんね。200円だよ」


おばちゃんに200円を渡しカレーうどんを受け取る。おばちゃんは笑顔で「カレーとばさないようにね」と注意をしてくれた。「気を付けるよ」と笑顔で返し紅葉の待つ席に行く。


席に戻る途中食堂に大勢の生徒が入って来た。普段は食堂で見ない顔の生徒たちが多く見られた。

湊はふと立ち止まり、団体の中心には誰がいるのか見てみる事にした。団体の輪の中にはメリド先生が居た。

少し困った顔で生徒たちに手を引かれていた。

女子生徒ばかりが集まっているのかと思ったら男子生徒も同じぐらいの人数混じっていた。メリド先生は男子にも女子にもモテるらしい。

再び足を動かし紅葉の待つ席に向かった。


席に着き「ごめん、遅くなった」と言うと、「何かあったの?まぁご飯食べよ」と割り箸をくれた。

2人で「いただきます」を言い食事を始める。

さっそく紅葉はハンバーグを1口サイズに切り口に運んだ。が口に含んだ瞬間目を見開き水を口に流しこみむせ込んだ。


「え!?ちょ大丈夫!?」


急に起こった出来事に慌てながらも、机に置いてあるティッシュを紅葉に渡しつつ声をかけた。

紅葉は手で大丈夫という事を伝え、口をティッシュで吹いた。乱れた呼吸を安定させるべく息を深く吸って吐いていた。

しばらくして落ち着いてから声をかけた。


「紅葉どうしたの?大丈夫?」


紅葉は水を一口飲んでから答えた。


「いやーこのハンバーグね。むっちゃ熱いの。舌を火傷するぐらい熱いの」


そう言い紅葉は舌をべっと出し「ほへ、ははふはっへはい?」と言った。舌を出したまま話した為湊は紅葉が何を言っているか理解出来なかった。

「え?なんて?」と返すと紅葉は舌をしまい「赤くなってない?って聞いたの」と言い水を入れに席を立った。


しばらくして紅葉は水を入れて席に戻って来た。そして食堂を見渡し


「そう言えば今日食堂にやけに人多いけど何かあったの?」


水を飲みながら尋ねた。湊は口に含んでいる食べ物を飲み込み答えた。


「新しい先生が生徒に連れられて食堂に来てるからだと思うよ」


「ふーんモテモテじゃん」


湊は「モテモテだよねー」とだけ言うとうどんをさらえ、完食した。

紅葉はハンバーグを冷ましながらゆっくりと食べ、徐々にハンバーグの存在を消していった。


しばらくして紅葉がご飯を食べ終わる頃に1人の生徒が近付いてきた。


「あ、枯木さん今少しいい?」


声をかけてきたのは、紅葉の所属する図書委員の委員長だった。


「どうしました?」


ティッシュで口を吹き「ごちそうさま」と言い紅葉は答えた。


「枯木さん。急で悪いんだけどね、今日の放課後当番だった子が早退しちゃって…それで代わりに今日の当番お願い出来る?」


委員長は申し訳なさそうに両手を合わせお願いした。

紅葉はこちらを向き「今日帰るの遅くなってもいい?」と尋ねて来た。「うん。いいよ」と頷く。紅葉は委員長の方を向き「代わりできますよ」と返した。

委員長はパァっと笑顔になると紅葉の手を握った。


「枯木さんありがとう!放課後になったら鍵渡しに行くね」


「はい、待ってますね」と紅葉は返し返した。委員長は「ありがとー本当にありがとう」と言い去っていった。委員長の背中を見送ると紅葉は湊の方を向いた。


「帰るの遅くなるね。どーする?先に帰る?」


「ん?紅葉が終わるの待ってるよ」


「ありがと。さっ食器返して教室に帰ろっか」と紅葉は席を立った。湊も席を立ち一緒に食器を返しに行った。

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