第10話 世界の命運を決める15分(3)
・・10・・
「目標、オーガロード!! ゴーレム達、大将首をたたっ斬れ!!」
「狐火達よ、取り巻きの鬼共を焼き尽くせ」
「セブンスより総員へ!! SA3及びゴーレムとアカネへの支援法撃をしつつ神聖帝国軍部隊の妨害を阻止しろ!! 連中の動きは早いぞ直ちに取り掛かれ!!」
オーガロードとオーガの軍勢が出現してから、戦場はシンプルな戦闘に変わった。
日本軍はオーガロードとオーガの軍勢の撃滅。
神聖帝国軍はオーガロードとオーガの軍勢の支援及び、日本軍への妨害攻撃。
素人目に見ても分かりやすい戦いは、だからこそ苛烈さもまた分かりやすかった。
純粋な火力と魔法火力のぶつけ合い。あらゆる力をふるった壮絶な殴り合い。
神聖帝国軍はオーガロードやオーガ達に迫る大輝やアカネを、数の暴力に任せてとにかく多数の砲弾と銃弾と法撃を注ぎ込んだ。
これに対して日本軍は水帆や知花や璃佳などの膨大な法撃数を発揮可能な能力者がほぼ全てを迎撃。
これを終えると、今度は一撃に優れる能力者や孝弘やアルトのような近〜中距離戦に長ける能力者が敵兵列に穴を開けるか斬り込みを行って崩していく。
こうなると神聖帝国軍は大輝やゴーレムにアカネ達ではなく、孝弘や璃佳達との交戦に集中せざるを得なくなる。
あとの大きな反動覚悟で切り出した『完全解除』で個人戦力をかなり底上げしたとはいえ、圧倒的な数的不利を圧倒的な質的優位で互角かそれ以上に天秤を傾けさせていた。
その結果として、大輝・アカネ対オーガロードの実質的な直接対決状態が生まれていた。
「邪魔だッッ、どけぇぇ!!」
「燃やし燃やし、消し炭へと変えよ。『
大輝が風属性魔法を付与し鋭利が大幅に増した薙刀を振るい深く大きな傷をオーガの巨体に刻み二度と立ち上がらなくさせると、次に現れた大鬼にはアカネの
ゴーレム達の連携もまた見事の一言に尽きる。
オーガとゴーレムの体躯はほぼ同じであったが、器用さはゴーレム達の方が上手だった。相手の攻撃を受け流し、間隙を狙って相手をよろめかせて叩き切るか叩き潰すかをするほどに。
ただしゴーレムがオーガに劣る部分もあった。丸太ほどの太さがある腕や脚からも感じさせる
オーガロードはともかく、オーガは魔法障壁があっても魔法は使えない。だがその分、力が強い。この点でゴーレムは不利だったし、現実に一体のゴーレムが二体のオーガに粉砕されていた。
だから大輝も細心の注意を払って戦わざるを得なかった。
「大輝よ、気をつけよ!! この鬼ら、相当な怪力じゃ!! お主の障壁とて身を守る担保になるか怪しいぞ」
「さっき身をもって知った!! 掠っただけで障壁が二枚も持ってかれるとか、召喚術者はかなり手練だ。普通のオーガはここまで強くねえ」
「ならば致し方あるまい。時間も迫っておる」
「おう、ギアを一個上げるか」
(すまぬ、璃佳。Sランクを一人寄越してくれぬか。一点突破するにはちと厳しくての。)
(分かった。米原中佐を向かわせる。)
(彼なら川島と息を合わせられるのう。)
(そういうこと。三十秒ちょうだい。穴埋めは私がするから気にしないで。)
(あいわかった。)
大事な荷物を抱えた空飛ぶ宅急便が転移門付近に来るまであと八分を切っている。残ったオーガは手負いを含めて十数体。オーガロードはどっしりと構えつつも絶妙にいやらしいタイミングで炎属性魔法を撃ち込んでくる。
対して、大輝のゴーレムは手負いを合わせて残り六体。キルレートからすれば十分な戦果だが、ほぼ無傷のロード級を残してこれはやや心もとない。
敵の鬼共、なかなか優秀ではないかとアカネは感じながらも、これ以上は時間をかけられないと若干ながら焦りを抱いていた。
二十数秒後。
予定より数秒早く孝弘が到着した。
「孝弘、背後を頼むぜ」
「任せられた。前だけ気にして進んでくれ」
たった一往復の会話だけで二人は互いの意図を掴んだ。
そこからは阿吽の呼吸だった。
「チャージ、ハイショット」
「『
「チャージ、オクタハイショット」
「邪魔だ邪魔ァ!! とっととどきやがれ!! どかねえなら切り刻むッッ!!」
孝弘が風属性貫通術式を込めた高威力弾を放てば、大輝が間髪入れずに土属性の礫弾を周囲のオーガ達へ撒いていく。
一瞬の間が生まれたのを孝弘は逃さず開いた空間へ駆けていき、行く手を阻もうとする二体のオーガの額に風穴を開ける。
左右からオーガ二体が迫ろうとするが、これを大輝は鮮やかに切り伏せる。
残るオーガは数体。悠然と立ち、時に法撃を孝弘達へ向けていたオークロードもここでようやく動き出す。
「アカネ、孝弘」
「うむ」
「ああ」
「俺らで鬼退治といこうぜ」
「報酬は世界の平和だな」
「最高のお宝じゃねえか」
「うむ。御伽噺はハッピーエンドがお決まりじゃからな。勝利を掴もうぞ」
世界の命運が決するまで、あと六分三○秒。
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