最終章 『オペレーション・ブレイクドア』
第1話 作戦第一段階
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いよいよ『オペレーション・ブレイクドア』が開始された。
二〇三七年四月二二日午前八時三五分。北海道苫小牧市上陸ポイントの各所に大量の対地爆弾と対地ミサイルが降り注いだ。
発射したのは艦隊の艦艇や対岸の青森や秋田のミサイル部隊、戦闘機部隊だけではない。山形・新潟・富山・石川・福島・茨城・東京・埼玉の各地にあるミサイル部隊や東日本各地の空軍基地の戦闘機や爆撃機から放たれたもので、むしろこちらの方がメインであった。
長距離弾道弾に至っては西日本各所からも発射されていて、対地ミサイルや対地爆弾の投射量だけでも東京奪還戦や仙台奪還戦を大幅に上回るものであった。
これを可能にしたのは、海外からのミサイル供与だった。
『オペレーション・ブレイクドア』は世界各地で同時多発的に行われている作戦である。それ故にこの作戦が始まるまでに比較的余裕のある国――日本の場合は主にオーストラリア・ニュージーランド・インドネシア・韓国からの供与――から行われており、特にオーストラリアや韓国は兵器の一部は同じものを採用していることもあって融通がしやすかった。
特に供与量が多かったのはトマホークを始めとした巡航ミサイルなどの艦艇発射型ミサイル類と、地上発射型のミサイル類だった。日本はこれらを緒戦で相当量を消費していたから、供与は願ったり叶ったりだった。
供与されたのはそれだけでは無い。
用途が限られる割に今回の作戦で供与国があまり使わず、かといって日本はというと大量に必要としていたのが艦砲の弾薬類だった。
対地ミサイルや対地爆弾の第一波攻撃が終わってから始まったのは艦砲射撃だった。
ミサイルや爆弾がマジックジャミング装置や神聖帝国軍諸施設――特に、捕虜尋問で入手した司令部施設の地点や空戦能力のあるドラゴンがいる施設――の破壊を目的として、苫小牧市の内陸部や千歳市街地に新千歳空港周辺。さらに対地ミサイルの一部は札幌市周辺にも向けたのに対して、艦砲射撃は苫小牧市の上陸ポイントを中心に上陸地点では無いものの敵勢力がいると思われる白老町やむかわ町西部にも振り向けられていた。
いくら現代の艦砲が長大射程になったとはいえ、一部の艦砲を除いてその最大射程は約四〇キロ程度。陸地にいる敵から視認されない為に射程ギリギリからの砲撃となると、沿岸の砲撃が精一杯だった。
一部の艦砲にあたるものもある。魔法科学式一二〇ミリ雷属性利用電磁投射砲だ。数は少ないながらもこちらは苫小牧市の比較的内陸部までを射程におさめ威力も従来型の艦砲に比べて高いから、故障も覚悟で撃って撃って撃ちまくっていた。
作戦第一段階の切り札は苫小牧市が焦土と化しつつある昼過ぎに投下された。
仙台での予想外の使用により多くは揃えられなかったものの、数発の用意がされた従来型マト弾だ。
こちらは苫小牧市街地や千歳市街地周辺にむかわ町西部へ投下され、内二発は札幌市にも投下された。
このように日本軍は作戦第一段階から大盤振る舞いといえる火力投射を行ったのである。
これに対して神聖帝国軍は反撃がおぼつかなかった。奇襲同然の状態でミサイルの雨にやられ、それが終わったかと思ったのも束の間で、今度は砲弾の雨。途切れなく行われる攻撃はどこから来たものか分からず、分かったとて反撃の手段がない。苫小牧市周辺でドラゴンを収容していた施設はピンポイントに狙われ、九割方の戦力を喪失したからだ。
残り一割ではどうしようも無い。そう判断した神聖帝国軍の指揮官は優秀だったが、後方へ逃がそうとした時には遅かった。今度はマト弾が降ってきたからである。
日本軍は苫小牧市周辺から千歳市周辺にかけて、神聖帝国軍にとっては信じられないほどの火力投射を行ったことは大きな効果を生んだ。
遂に奴らは北海道と呼ばれているこの島に上陸した。狙いは恐らく、奴らにとってこの島の中心都市だった『札幌』と『その周辺都市』だろう。
神聖帝国軍の指揮官達はそう判断したのだ。
ここからの彼らの動きは優秀だった。
近傍の小樽や岩見沢、やや遠方だが深川や旭川からも部隊の移動が始まったのである。
確実に注意は引き付けられていたし、事実として翌日からは日本軍の地上部隊が上陸する。
その中には、魔法軍の最精鋭部隊が一つ。『西特大』もいた。
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