第2章 富士・富士宮防衛戦
第1話 小康状態は長くは続かず
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『富士・富士宮防衛線』
異世界からの侵略者によって全世界が混沌と地獄に包まれている中で、日本が比較的マシに戦えている要因の一つがここ、孝弘達がいる富士・富士宮防衛線である。
日本はさして広くない国土に二箇所も門を作られたことで二正面作戦となった。その結果が首都東京の陥落であり、辛うじて保てている日本海側との連絡路遮断の危機である。
だが、これでも他国から見れば日本はよくやっている方だった。比較的早期に首都を捨てた事で軍は要となる太平洋側に次の防衛線を設置出来たからである。それが、『小田原防衛線』『富士・富士宮防衛線』『静岡・清水防衛線』の三つの防衛線であった。
このうち小田原防衛線は既に破棄されたものの、『富士・富士宮防衛線』『静岡・清水防衛線』は健在で、現在の最前線は『富士・富士宮防衛線』だ。その背後にはさらに堅固な『静岡・清水防衛線』があり、いわゆる三段構えの防衛線を日本軍は構築していたのである。
その『富士・富士宮防衛線』。日本陸軍が二個師団、日本魔法軍が一個師団(注:日本魔法軍の一個師団定数は、陸軍の一個師団定数の半分である五〇〇〇人。)の計三個師団及び日本海兵隊一個旅団。合計で約三〇〇〇〇の部隊が集結している。後背にあり静岡東部における最終防衛線たる『静岡・清水防衛線』には約二五〇〇〇の部隊が控えているのだから、日本軍が静岡の防衛線をいかに重視しているかが理解出来る配置だと言えるだろう。
静岡東部の地形を上手く活用した防衛線配置に、太平洋側へ約五五〇〇〇もの兵力を集中配備した今の作戦計画。それらは最善とは言わなくともベターであると軍は感じており、首都機能を京都と大阪に移転したことで辛うじて機能を保てている政府も同じような感想を持っていた。
しかし、『富士・富士宮防衛線』における小康状態はそう長く持たなかった。
『小田原防衛線』撤退から一三日。一旦動きが鈍っていた有象無象のバケモノであるCTは生きとし生けるものを踏み潰さんと再び西へと歩みを進める。
その数、小康状態時点で確認されていた約四〇〇〇〇に加え東から追いついたであろう追加の四〇〇〇〇で計約八〇〇〇〇。太平洋側の静岡だけでもこれだけの数が動き出した。
奇しくもその日は孝弘達が今後の身の振り方を迫られ決めた一〇月一日。四人の異世界帰還組は、世界規模の戦争に否が応でも巻き込まれることとなる。
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