第997話 山から下る夢
「夢を見て焦ったよ」
「へー、どんな?」
「最初は寺院みたいな建物」
「あー」
「巨大なので時間がかかった」
「まだあるの?」
「そう、山の中や街の中」
・・・
延々と下る夢。
道も知らないのに・・・
おまけに、途中から手荷物を抱えていた。
だから上りは敬遠した。
しかもいつの間にか、二人の人物が追って来る。
ふと気付いた。
「これは日本だ」
■日が昇るまで?
ヤコブの組み討ちを思い出した。
彼は夜明けまで闘い、足の片方に障害を受けた。
創世記32章(ヤコブの焦り)
1 さて、ヤコブが旅路に進んだとき、神の使たちが彼に会った。
2 ヤコブは彼らを見て、「これは神の陣営です」と言って、その所の名をマハナイムと名づけた。
3 ヤコブはセイルの地、エドムの野に住む兄エサウのもとに、さきだって使者をつかわした。
4 すなわちそれに命じて言った、「あなたがたはわたしの主人エサウにこう言いなさい、『あなたのしもべヤコブはこう言いました。わたしはラバンのもとに寄留して今までとどまりました。
5 わたしは牛、ろば、羊、男女の奴隷を持っています。それでわが主に申し上げて、あなたの前に恵みを得ようと人をつかわしたのです』」。
6 使者はヤコブのもとに帰って言った、「わたしたちはあなたの兄エサウのもとへ行きました。彼もまたあなたを迎えようと四百人を率いてきます」。
「長子の権」を豆で買い取ったヤコブだが、その後も負い目を感じていた。
トリッキーな手法を使ってしまったからだ。
ヤコブを『日本』という国家に当て嵌めると、この土地にはエサウの子孫が混じって暮らしているのかも知れない。
推理だが「江戸」の地名からは「エドム」(エサウの別名)が想起されるからだ。
また、新生児を「赤子」と呼ぶ風習もある。
(赤子はエサウを意味する)
すると、闇が開けると、両者が対面する時期が来るのだろうか?
朝の覚醒により、激突が起きるだろうか?
7 そこでヤコブは大いに恐れ、苦しみ、共にいる民および羊、牛、らくだを二つの組に分けて、
8 言った、「たとい、エサウがきて、一つの組を撃っても、残りの組はのがれるであろう」。
9 ヤコブはまた言った、「父アブラハムの神、父イサクの神よ、かつてわたしに『おまえの国へ帰り、おまえの親族に行け。わたしはおまえを恵もう』と言われた主よ、
10 あなたがしもべに施されたすべての恵みとまことをわたしは受けるに足りない者です。わたしは、つえのほか何も持たないでこのヨルダンを渡りましたが、今は二つの組にもなりました。
11 どうぞ、兄エサウの手からわたしをお救いください。わたしは彼がきて、わたしを撃ち、母や子供たちにまで及ぶのを恐れます。
12 あなたは、かつて、『わたしは必ずおまえを恵み、おまえの子孫を海の砂の数えがたいほど多くしよう』と言われました」。
13 彼はその夜そこに宿り、持ち物のうちから兄エサウへの贈り物を選んだ。
14 すなわち雌やぎ二百、雄やぎ二十、雌羊二百、雄羊二十、 15 乳らくだ三十とその子、雌牛四十、雄牛十、雌ろば二十、雄ろば十。
16 彼はこれらをそれぞれの群れに分けて、しもべたちの手にわたし、しもべたちに言った、「あなたがたはわたしの先に進みなさい、そして群れと群れとの間には隔たりをおきなさい」。
17 また先頭の者に命じて言った、「もし、兄エサウがあなたに会って『だれのしもべで、どこへ行くのか。あなたの前にあるこれらのものはだれの物か』と尋ねたら、
18 『あなたのしもべヤコブの物で、わが主エサウにおくる贈り物です。彼もわたしたちのうしろにおります』と言いなさい」。
19 彼は第二の者にも、第三の者にも、また群れ群れについて行くすべての者にも命じて言った、「あなたがたがエサウに会うときは、同じように彼に告げて、
20 『あなたのしもべヤコブもわれわれのうしろにおります』と言いなさい」。ヤコブは、「わたしがさきに送る贈り物をもってまず彼をなだめ、それから、彼の顔を見よう。そうすれば、彼はわたしを迎えてくれるであろう」と思ったからである。
21 こうして贈り物は彼に先立って渡り、彼はその夜、宿営にやどった。
ヤコブは兄の怒りを想定し、大いに恐れていた。
もし、日本の先住民「アイヌ」がエサウの子孫なら、確かに民族同士の摩擦を回避しなければならない。
人が心に「恐れ」を抱くと、鬼が寄って来る。
22 彼はその夜起きて、ふたりの妻とふたりのつかえめと十一人の子どもとを連れてヤボクの渡しをわたった。
23 すなわち彼らを導いて川を渡らせ、また彼の持ち物を渡らせた。
24 ヤコブはひとりあとに残ったが、ひとりの人が、夜明けまで彼と組打ちした。
25 ところでその人はヤコブに勝てないのを見て、ヤコブのもものつがいにさわったので、ヤコブのもものつがいが、その人と組打ちするあいだにはずれた。
先人は、「神との戦い」という意味で「相撲」行事を続けていたようだ。
しかし相手は、「夜の神」であり、夜明けを極端に恐れる。
鬼ヶ島と呼べそうな日本列島で「朝」の時期を迎える日本の国家も、いろいろな意味で「腰の障害」を抱えている。
26 その人は言った、「夜が明けるからわたしを去らせてください」。ヤコブは答えた、「わたしを祝福してくださらないなら、あなたを去らせません」。
27 その人は彼に言った、「あなたの名はなんと言いますか」。彼は答えた、「ヤコブです」。
28 その人は言った、「あなたはもはや名をヤコブと言わず、イスラエルと言いなさい。あなたが神と人とに、力を争って勝ったからです」。
勝ったか負けたかよく判らないヤコブ。
日本は、いろいろな意味でギクシャクしている。
先人が、神道に仏教を取り入れた結果、生じたギクシャクはどうするのか?
「仏教の山」を降りるしかないだろうが、日本は各家庭に仏壇がある奇妙な神道国家。
原因は、「名乗らない神」であるはずだ。
29 ヤコブは尋ねて言った、「どうかわたしにあなたの名を知らせてください」。するとその人は、「なぜあなたはわたしの名をきくのですか」と言ったが、その所で彼を祝福した。
30 そこでヤコブはその所の名をペニエルと名づけて言った、「わたしは顔と顔をあわせて神を見たが、なお生きている」。
31 こうして彼がペニエルを過ぎる時、日は彼の上にのぼったが、彼はそのもものゆえに歩くのが不自由になっていた。
32 そのため、イスラエルの子らは今日まで、もものつがいの上にある腰の筋を食べない。かの人がヤコブのもものつがい、すなわち腰の筋にさわったからである。
複雑怪奇な神の国は、どのように仏門から下山し「神の花嫁」を目指すのか?
簡単に準備できる状況ではない。
国家の中には、巨大な仏像が多数ある。
鬼の像を境内に飾る寺院まで。
こうした諸問題を夜明けまで引きずる庶民・・・
追って来た「蛇」の吐いた水を吸い込んでドロドロの状態なのだ。
結局、「昇った太陽」に乾かしてもらうしかないのかも知れない。
『山から下る夢』は、そうした国家のジレンマと焦りを教えていたようである。
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