第926話 カルトが教えた狩りの精神
「カルトが人を狩る理由は?」
「社会の掌握」
「でも世の神はサタンでしょ」
「二役に気付かないんだ」
「つまり戦いの振りが読めない」
「そう」
「掌握で何が実現するの?」
「天軍への牽制だね」
・・・
カルトはよく槍玉に上がるが、詳細な分析は見かけない。
単なる悪口になっても困るからだろうか。
そこにはまだ、過去の仲間が囲い込まれているわけだし。
しかし研究材料として分析しなければ、せっかくの経験が無駄になってしまう。
在籍の経験があれば、決して読めない事柄が収集できるので、脱会者の人生は貴重なのだ。
しかも、鬼が考えている最終目的も読めるという恵まれた条件が揃っている。
単に、潜り込んだスパイであれば、心がどっぷり浸った経験をすることもないから「目覚めの経験」もないだろう。
信じ切っていた自分を、客観的に眺めてこそ「カルトの精神」が分析できるのだ。
これは、どんな宗教にも共通している事柄であり、過去の日本が「靖国」を中心に暴走した暗黒時代の分析にも役立てる事が出来る。
先人はそのような時代を「風の時代」と考えたようだ。
こんな語彙がある。
「おかしな風が吹いてるぞ」
実際その時代は、自分で自分を「正常だ」と考え、人も同じ動きだから安心という集団心理が満ちていた。
大祭司である天皇陛下が指揮しているという心強さがバックにあった。
日本人はそうした権威の風に弱い人種・・・いや、人類全体が「風にそよぐ葦」なのである。
防風のため、岩陰にでも隠れないと影響無しでは済まされないだろう。
自分たちは正常と思い込まされ、「鬼畜米英」を唱えた日本人だが、敗戦後は何一つ反省の社会運動をしていない。
原爆記念碑には、「過ちは二度と繰り返しません」と刻んであるが、これを気休めにしてはならない。
戦後と言えば、共産主義者がシェアを広げるための喧伝活動を行い、靡いた人もいるはずだ。
しかし、国家ぐるみで社会の間違いを分析し、教育にも活かしていたらどうなっただろう?
■反省が定着した国
ヒトラーのナチズムで夢中になっていたドイツ国民は、戦後にそれを痛く反省し、学校でも「ハイル」の形で挙手しなくなった。
教壇から認識できる遠慮がちな形で、意思を示す。
それが徹底されている。
ファッショ政権と言えば、ムッソリーニのイタリアが先輩格だが、ここでも戦後の反発があり、指揮した彼は市民によって枝に吊るされた。
つまり、三国のうちで反省できていないのは、日本だけなのである。
この国の民衆は、今も暴走の可能性を秘めているのだろうか。
いや、歯止めとしての平和憲法が与えられ、これが救いとなっている。
「改正しよう」という妙な風が吹いているが、一度手を付けたら最後、鬼の喜ぶ既成事実が生じてしまう。
■長いものに巻かれる民
聖書の中、エデンの園で人類を掌握した鬼の組織は「蛇」と呼ばれる。
いわゆる「長い者」の象徴だ。
これも・・・そう。
→ 御上(人々の長)
日本民衆は、「長い者」に素直な気質を保っているが、それはモーセ以来の伝統に思える。
※ 伊勢神宮秘蔵の「みいさん」もある。
権力に服従する日本的感性は、他の国家や宗教にもあるが、少し中身が違っている。
「恨みを水に流す」という気質が介在するにしても、あれほどの破壊を経ても「長い者」に従順を保ち続けている。
それと正反対なのが、西のユダヤ人。
彼らがナチスに対する憎しみを示す熱意は並大抵のものではない。
日本人は敵であったアメリカと懇意の付き合いをするほど、「水に流す手本」のような気質。
実際、戦時中のアメリカには、日系人が多く住んでいたが、彼らは監獄に隔離され小規模であるにしても迫害は受けている。
ただ、「恨みは水に流せ」という日本的精神が浸透しているためか、むしろ背後の風(状況)を憎むかのような形である。
鬼がカルトを利用する理由には、「風を憎ませない」という最終目的がある。
人類をその状態に置くことで、「天の神からの切り離し」が実現するからだ。
つまり、「人類は自分たちの意思で鬼神に寄り添っている」という名目が必要だからである。
カルトで悪役の鬼は組織破壊に至るほど執拗ではなく、適度な負けを演じている。
「正義」を演じるカルト側の鬼は、深追いしない。
カルトですら、徹底して憎もうとしない鬼を、なぜ私がここまで憎むのか?
それは鬼に甘く生きて来た人生を反省しているためだ。
鬼への甘さを「当人の意思」と解され、天の神との「切り離しの口実」にされてしまうからである。
「見ろ、奴は納得している」
「我らは人の意思を尊重している」
「手を出すな」
しかし人類は、眠りの中にあるだけなので、もし偽の神に目覚めたら?
拝んでいた神々を猛烈に憎む時代が来るだろう。
そうなると、天軍は動ける。
それがアメリカの政権で始まっているのだが、日本はなぜか難儀している。
民衆がまだ目を覚ましていないからのようだ。
しかし目覚めると、カルト教団への憎しみどころではないだろう。
カルトが教えた「狩る人(と)」の精神を、この国では「赤紙」という名で呼んでいる。
※ 幹部たちは「負ける戦争」と知っていたが風に靡いた。
国家ぐるみで民の人生を破壊して来た日本だが、この先はもう人を狩れなくなる。
天軍は既に動いているからだ。
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