第616話 風のマニマニ

「『風任せ』ってどんな意味?」

  「危険でしょ」

「えっ?」


・・・


【風の随に随に】カゼノマニマニ

そのままに任せる様。

成行き任せ。

ままに。



「随」・「随意」を「まに」と読む。


「ままよ」という表現もあるが、任せている相手は?


『風』。



聖書では、『風』を「霊者」と教えている。

(良い霊者ならいいが…)


すぐに思い浮かぶのはヨブ。




ヨブ記1章

1 ウヅの地にヨブという名の人があった。そのひととなりは全く、かつ正しく、神を恐れ、悪に遠ざかった。

2 彼に男の子七人と女の子三人があり、

3 その家畜は羊七千頭、らくだ三千頭、牛五百くびき、雌ろば五百頭で、しもべも非常に多く、この人は東の人々のうちで最も大いなる者であった。




信仰心が厚く、『神』を良い存在と信じていた。




 (幸福の一家であった)

4 そのむすこたちは、めいめい自分の日に、自分の家でふるまいを設け、その三人の姉妹をも招いて一緒に食い飲みするのを常とした。




 (ヨブは取り越し苦労)

5 そのふるまいの日がひとめぐり終るごとに、ヨブは彼らを呼び寄せて聖別し、朝早く起きて、彼らすべての数にしたがって燔祭をささげた。これはヨブが「わたしのむすこたちは、ことによったら罪を犯し、その心に神をのろったかもしれない」と思ったからである。ヨブはいつも、このように行った。




そんなヨブの信仰に、サタンが疑問を呈す。




6 ある日、神の子たちが来て、主の前に立った。サタンも来てその中にいた。

7 主は言われた、「あなたはどこから来たか」。サタンは主に答えて言った、「地を行きめぐり、あちらこちら歩いてきました」。

8 主はサタンに言われた、「あなたはわたしのしもべヨブのように全く、かつ正しく、神を恐れ、悪に遠ざかる者の世にないことを気づいたか」。

9 サタンは主に答えて言った、「ヨブはいたずらに神を恐れましょうか。

10 あなたは彼とその家およびすべての所有物のまわりにくまなく、まがきを設けられたではありませんか。あなたは彼の勤労を祝福されたので、その家畜は地にふえたのです。

11 しかし今あなたの手を伸べて、彼のすべての所有物を撃ってごらんなさい。彼は必ずあなたの顔に向かって、あなたをのろうでしょう」。




鬼は頭の中が読めるが、

状況変化までシミュレーション出来ない。


ヨブがもし、「保護のない状況」に置かれ、その時に示す「反応」を観てこそ、彼の本質が理解出来る・・・


例えば、「信頼性」が評判の車があっても、実際のラリーで過酷な山岳路を走り終えてこそ実質の確認が出来るという論理。


冷酷なサタンは「実地検証が抜けている」と告げたのだ。




温々(ぬくぬく)とした環境が変わればどうなるか?・・・その反応を見ないと変化は読めないと。




12 主はサタンに言われた、「見よ、彼のすべての所有物をあなたの手にまかせる。ただ彼の身に手をつけてはならない」。サタンは主の前から出て行った。

13 ある日ヨブのむすこ、娘たちが第一の兄の家で食事をし、酒を飲んでいたとき、

14 使者がヨブのもとに来て言った、「牛が耕し、ろばがそのかたわらで草を食っていると、

15 シバびとが襲ってきて、これを奪い、つるぎをもってしもべたちを打ち殺しました。わたしはただひとりのがれて、あなたに告げるために来ました」。

16 彼がなお語っているうちに、またひとりが来て言った、「神の火が天から下って、羊およびしもべたちを焼き滅ぼしました。わたしはただひとりのがれて、あなたに告げるために来ました」。

17 彼がなお語っているうちに、またひとりが来て言った、「カルデヤびとが三組に分れて来て、らくだを襲ってこれを奪い、つるぎをもってしもべたちを打ち殺しました。わたしはただひとりのがれて、あなたに告げるために来ました」。

18 彼がなお語っているうちに、またひとりが来て言った、「あなたのむすこ、娘たちが第一の兄の家で食事をし、酒を飲んでいると、

19 荒野の方から大風が吹いてきて、家の四すみを撃ったので、あの若い人たちの上につぶれ落ちて、皆死にました。わたしはただひとりのがれて、あなたに告げるために来ました」。




「風のマニマニ」どころじゃない。


日本ではこれを「災難」、つまり「サーイ(悪魔)からの難」と呼んでいる。




 (ヨブは真の義人だった)

20 このときヨブは起き上がり、上着を裂き、頭をそり、地に伏して拝し、

21 そして言った、「わたしは裸で母の胎を出た。また裸でかしこに帰ろう。主が与え、主が取られたのだ。主のみ名はほむべきかな」。

22 すべてこの事においてヨブは罪を犯さず、また神に向かって愚かなことを言わなかった。




確認は取れたが、酷い話。


「マニ」が「魔に(任せる)」というのなら、これ程恐ろしい態度はない。




【太占】フトマニ

(太兆とも)

古代に行われた卜占(ぼくせん)の一種。鹿の肩甲骨の焼けた割れ目で占う。




「マニ」は、英語の「マニフェスト」などから意味が汲める。



【manifest】マニフェスト

原義:手で押さえられた。

1.明らかな、はっきりした。

2.存在、見られる。

3.事を明らかにする。

4.幽霊、兆候などが現れる。



mani → 「手」



「(左の)風の手に任せる」となれば、「サタンの手」が伸ばされる。


ヨブの「取り越し苦労」が疑いを呼んだ可能性もある。


我々も、余計な心配事は排除すべきではないだろうか。


※ 但し、「先見の明」と「取り越し苦労」は別種なので、その点は注意するべし。

(霊感は必要である)




 ■一本道こそ無難


「どれも不安だよ」

  「だからお守り集めるの?」

「そう」



人は同時に、二つの道を歩めない生き物だ。

だから聖書は、「一本道」を教えている。


「多種多様」なら安心というものではない。


その態度は、「神の目に余る」。


→ 目に(many)…多数の


→ 余る(amal)…混合


神道は、「純粋」。

そして一本道。



だから、以下の態度はそぐわない。


「余す所無く集めるぞ」

 (amass:貯める・集める)


実施すると、まずい状況になる。


「あ・まずー!」

 (amaze:動転・驚嘆)



「風のマニマニ」は、人を動転の中に追い込む「鬼任せ」の道だからである。


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