第598話 鬼が犯した最大のポカ

「鬼は契約に拘るね」

  「そう規則ガチガチ」

「人を殺すのも規則で」

  「エジプトでやったな」

「あー、長男の皆殺し?」

  「そう、一人も残さず」

「なんという…」


・・・

特に拘るのが、


→ 長子の権



【長子】チャウシ

1.一番目の子。総領。

2.長男。



聖書には、その点で一貫性がある

・・・と、思ったが


鬼神は、大きな「ポカ」を犯していた。



【ポカ】

不注意から起こした、思いもかけなかった失敗。



聖書での契約は全て厳密。


→ 神と人との契約


しかし一つ、例外がある。




創世紀25章(選民を生んだ母)

21 イサクは妻が子を産まなかったので、妻のために主に祈り願った。主はその願いを聞かれ、妻リベカはみごもった。

22 ところがその子らが胎内で押し合ったので、リベカは言った、「こんなことでは、わたしはどうなるでしょう」。彼女は行って主に尋ねた。

23 主は彼女に言われた、「二つの国民があなたの胎内にあり、二つの民があなたの腹から別れて出る。一つの民は他の民よりも強く、兄は弟に仕えるであろう」。




「兄」と「弟」がはっきり区分されている。




24 彼女の出産の日がきたとき、胎内にはふたごがあった。

25 さきに出たのは赤くて全身毛ごろものようであった。それで名をエサウと名づけた。

26 その後に弟が出た。その手はエサウのかかとをつかんでいた。それで名をヤコブと名づけた。リベカが彼らを産んだ時、イサクは六十歳であった。




双子なのだが、

長子は間違いなく「エサウ」である。




27 さてその子らは成長し、エサウは巧みな狩猟者となり、野の人となったが、ヤコブは穏やかな人で、天幕に住んでいた。

28 イサクは、しかの肉が好きだったので、エサウを愛したが、リベカはヤコブを愛した。

29 ある日ヤコブが、あつものを煮ていた時、エサウは飢え疲れて野から帰ってきた。

30 エサウはヤコブに言った、「わたしは飢え疲れた。お願いだ。赤いもの、その赤いものをわたしに食べさせてくれ」。彼が名をエドムと呼ばれたのはこのためである。

31 ヤコブは言った、「まずあなたの長子の特権をわたしに売りなさい」。

32 エサウは言った、「わたしは死にそうだ。長子の特権などわたしに何になろう」。

33 ヤコブはまた言った、「まずわたしに誓いなさい」。彼は誓って長子の特権をヤコブに売った。

34 そこでヤコブはパンとレンズ豆のあつものとをエサウに与えたので、彼は飲み食いして、立ち去った。このようにしてエサウは長子の特権を軽んじた。




この『契約』は、人間同士が交わしたもの。


その後、老齢のイサクが、手探りでヤコブをエサウだと思い込んで長男の認定をした。


これにも神は関与していない。



その後、選民は「次男」であるヤコブから出る事になった。


鬼は「長子の権」に拘るはずなのに、「人間同士の約束」をそのまま取り入れている。


つまり、天の神からすれば「長子の権」はヤコブに無い。


それで、ヤコブが約束した「十分の一の捧げ物」も、基礎がグラついている。


「神との契約書」は?


あれば、こう書かれている。


「煮豆で権利が移った」

「ヤコブを長子と認める」



それ以後の鬼神は、あまりにも巨大なポカをそのままにして、「選民の歴史」を刻んだ。


そして、こう告げている。


「長子はわたしのもの」


ヤコブも、その子孫も、神から長子の認定を受けていないのにである。


「権利を豆で移す」というのは、「人間同士」の契約。


※ それ以降、鬼神が「長子の権」を重視する態度は「砂上の楼閣」となった。


ヤコブが笛を吹いたら、鬼がその調子(長子)に乗ってしまった・・・


※ どんな小さな事柄でも、「規則ですから」と問題視する鬼がこれをやったのか。


巨大ミス。

(ルーズ過ぎる長子の権)



これは、契約を重視する鬼神が犯した「最大のポカ」なのである。


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