第233話 鬼の罪作り
「鬼って悪の権化でしょ?」
「微妙に違うのよ」
「えっ? どう違うの?」
「鬼は偽善者」
「ん?」
・・・
罪なき人が処刑されたとしても、世間はすぐ忘れ去る。
イエスの犠牲はその風化を断ち切った。
その意味で、神の子の役割は
「鬼の罪作り」を世に知らしめ、歴史に残す事でもあった。
鬼は、「犠牲」を欲するあまり、「犠牲量産の仕組み」を構築し、自分は裁きの座に着いている。
仕組みとは、
→ 厳格な法
1.非常に細かく厳格な法を制定する。
2.うっかり者がこの網に掛かるのを待つ。
3.違反促進のため、密かに「失敗への誘導」を行う。
この世界で、「悪意無き過ち」で違反者になる者は多い。
例えばこんな経緯がある。
ある人の収入源を断つ。
その人は、何をやってもうまく行かない。ビジネスは悉く頓挫する。
(裏で鬼が邪魔を入れている)
模索していると、鬼が詐欺師を差し向け、借金を作らせる。
気付いた頃、詐欺師は逃げ、その人は雁字搦め。
・・・その借金は払いたくても払えない。
彼は、痛くもない腹を探られ、混乱のうちに罪人として処罰された。
鬼は過去、法の網を利用し、こうした多くの「罪人」を確保して来た。
正義の名で魔女狩りなども・・・
善良な人が、罪を被せられて処刑や・処罰をされるという部分は、天の目には「冤罪」に違いない。
しかし、この世で一度網に掛かると簡単ではない。
世の神の基準が世界を支配しているからだ。
他方、詐欺師は微罪か見逃しで終わる。
こうした鬼の仕組みに光を当てるためもあって、神の子は自らがその歴史の定置網に飛び込んだ。
それは闇の中で、鬼が巧妙に仕掛けてあった罠である。
これに光が当てられ、人類の記憶に残された。
世の神に教育された頭には衝撃だろう。
「法は正義じゃないのか?」
目覚めの朝が近付くと、真の悪人と冤罪、鬼による病巣の分析が始まる。
秘密結社の偽善も話題に上る。
鬼が絡むと、法治国家は詐欺師天国になる・・・と結論されるだろう。
カルト宗教も、鬼の後押しで繁栄を続ける事が出来たのだ。
■狂った秤
金融・流通も、鬼が関係すると不公平と罪人を作り出す。
スーパーの裏で、賞味期限の過ぎた食品が大量に捨てられている。
その一方で、お金が無くて食べられない老人が万引きをして処罰される。
世の神はこうして、弱者に厳しい世界を構築していた。
しかも、詐欺師には優しい。
なぜなら鬼そのものが詐欺の神であり、お気に入りの配下である詐欺師は、鬼に「供物」(自殺者や餓死者、犯罪の誘発)を提供するからだ。
量産された苦痛の正義が日々、大量の犠牲を鬼神に捧げる歴史が続けられたが、
その見本として顕著な国が神の国(エルサレム)であり、近代の日本であった。
黙示録にある「岩陰に隠れる要人」は、この理不尽に気付いた支配層の恐れを描写している。
天秤に掛けたら、「許す事」の方がよほど価値ある選択であったのに。
「鬼の罪作り」・・・
つまり、法治国家が隠し持つ冤罪捻出の仕組みに、この先、天が裁きを下す。
その日が急速に近付いている。
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