第231話 奴さんの取引

「繁盛の秘訣を聞いたよ」

  「どんな?」

「鬼と取引するんだよ」

  「えっ!」

「商売が大成功するらしい」

  「禁じ手じゃん」


・・・

昔、それを使ってしまった人がいた。


「ヤコブ」だ。


もちろん、相手が神に化けていたから、ヤコブは知らないで取引したのだった。


その相手と、夜通し相撲を取って最後に粘り勝ち。


去ろうとする相手を離さず、祝福をもぎ取った。


これが相撲の原型だと以前述べたのだが、ここで「その相手が鬼である」という部分を強調しておこう・・・


鬼は巧妙に化ける。


気付かなかったヤコブが悪いのではない。


ただ、そのようにして鬼の懐に入ってしまったヤコブの子孫は、祝福と引き換えに「犠牲」を支払う宿命に陥った。


意外だが、

これが神の国の始まりである。




 ■イエスが、光をもたらした


現代の我々は、選民の父祖であるヤコブに複雑な対応をしている。



「確かにヤコブの神社がないね」

  「それと、変な呼び方してる」

「どんな?」

  「奴さん」


・・・

イエス以後の選民(直弟子)は、ヤコブに尊敬の念を持ってはいたが、妙な言葉も使っている。



【臣・奴】やつこ

1.目下を罵り、親しんで呼ぶ表現。

2.神または朝廷や君に仕える人。

3.転じて、ある物事に心身の自由を奪われた者。虜になる者。



「3」の部分にヤコブの陥った立場が示されている。


何しろ相手は「鬼」(偽神)。


必ず、祝福の見返りを要求する。


初期の選民は、多くの犠牲を支払っているが、それは「鬼との取引」に起因しているのだ。


※ まず戦争へと誘導し、戦いで敵味方に多くの犠牲者を出す。また、厳格な縛りと法律で、違反者を刑罰に投げ込んでその血で鬼を喜ばせる。現代でも、金持ちクラブが裏側で密かに行って来た幼児虐待などが、その流れの中にある。


→ 鬼の偽善に注意せよ



これだけの知識をもたらす存在は、神の子イエスしかいない。


そして御子は選民を、何とか「鬼神」から開放しようと試行錯誤していた。



モーセを一度目に山に呼んだのは鬼神だったが、二度目に招いたのは、創造主の御子ロゴス(イエスの前身)だったのだ。


その時モーセは「岩の上に立て」と促され、創造主「岩の上」に立場を定めた。

(鬼神を離脱)


こうして御子は、選民を夜の神(相撲相手)の懐から引き出した。


その後、御子はアバターとして地上に生れ、エルサレムの都で教えた。


そこで、選民が「奴さん」によって「鬼の懐」に入った事情を説明し、後に「岩の上」に立場を変えた話をしたはずである。


日本語の「奴さん」は、そうした選民の紆余曲折を悟らせる言葉として残されているのだ。



日本の正月には、「奴凧」が天空を舞う。


ここでも、ヤコブ(と子孫)は「風に舞い上がる」というヒントを与えている。




 ■鬼とは取引しない事


現代社会の裏側で、大金持ちの多くが悪魔崇拝を行っている。


彼らの仕事は次々と成功し、短期間に巨大な財産を築くだろう。


しかし鬼は、必ず「犠牲」を要求して来る。


どんな形にせよ、それを支払わねば破滅を被るのである。


「神」に仕える奴さん・・・


彼は知らないで鬼と取引してしまったが、子孫は結果的に御子によって救われた。


この先も我々は、鬼と取引すべきではない。


たとえ相手が「神だ」と名乗っても。


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