第10話 黒魔法使いキリス

「カリスー!」

 またアリスは悲しみに襲われていた。

「まさか騎士様が殺されるなんて。」

 イリスも騎士カリスの強さを知っていたのでショックを受けていた。

「はあ!?」

 その時、アリスは何かに気がついた。

「俺に何かを教えようとした先生ばっかりが死んでいく!? 実は俺は呪われているんじゃないだろうか!?」

「そんなバカなことがある訳ないでしょ。」

 しかし事実はアリスの推理通りであった。白魔法使いエリス、空手家オリス、騎士カリスとアリスとイリアに修行をつけた者たちが次々といなくなってしまった。

「ただいま。」

「おかえりなさい。神父様。」

 ウリス神父が帰ってきた。

「アリス、これを。」

 神父はアリスに剣を渡す。本当に騎士が持つような立派な剣だ。

「剣?」

「カリスの剣だ。」

「なっ!?」

 アリスは師であるカリスの剣を手にして何とも言えない不思議な感覚を覚える。

「騎士カリスの最後の弟子として、アリス。おまえが持っているのが一番いいだろう。」

「騎士様の剣・・・・・・師匠の剣・・・・・・カリス!!!!!!!!!!!!」

 思いが高鳴ったアリスは剣を教えてくれた恩師の名を涙ながらに叫んだ。


「なに!? 騎士カリスがやられただと!?」

 その頃、王都リスでも騎士カリスがやられたことが噂され始めた。報告を受けたリス国王も寝耳に水で驚いている。

「バカな!? カリスほどの者がやられたというのか!?」

「はい。それも無残な姿で。」

 カリスは悪魔の爪を持つマレブランケによってぶつ切りにされて亡くなった。

「ヌヌヌヌヌッ!? 騎士の称号を倒すとはいったい犯人は何者なのだ!?」

「人間ではないのかもしれませんね。」

 そこに一人の魔法使いが現れる。

「おお! キリス!」

 現れたのは黒魔法使いのキリスだった。

「私がリス村に行きましょう。」

「行ってくれるのか! キリスが行ってくれるなら安心だ。」

 黒魔法使いはリス村に行くことになった。

「それにつきまして、国王様にお願いがございます。」

「なんだ? なんでも申してみよ。」

「大隊を編成して下さい。」

「大隊!? 大隊だと!?」

 大隊という言葉に国王は驚いた。大隊とは10人以上の大規模な部隊のことを指すからだ。

「はい。国王様。今回の教師連続殺人事件は、もはやただ事ではありません。一度に大量の兵士を導入して、速やかに解決を図るべきです。」

 キリスは国王に進言する。

「ヌヌヌヌヌッ!?」

 大隊の編成に戸惑う国王。

「今回は騎士カリスも倒され、リス王国の威厳に傷がつけられました。ここで何もしなければ、犯人は更に犯行を重ね、他国が我が国を軽んじれば戦争をしかけてくるでしょう。それに平和が脅かされた国民は国王様を疑うでしょう。」

 国の騎士が倒されるとは、国の名誉に傷がついたということになる。

「わ、分かった。全権を与える。今回の連続殺人犯を終わりにさせろ。」

「はは、かしこまりました。」

 こうして黒魔法使いキリスは大隊を引き連れてリス村に派遣されることになった。


「エリス、オリス、カリスまで、みんな、みんな死んでしまった。」

「そうね。私たちの先生ばかり。」

 アリスとイリスは悲しみで途方に暮れていた。

「アリス、あなたは死なないでね。」

「俺は大丈夫だよ。それよりもイリス、おまえも死ぬなよな。」

「うん。私は死なない。いつもアリスの側にいるよ。」

「イリス大好き! 結婚して!」

「嫌よ。」

「ガーン!」

 相変わらずの夫婦漫才を繰り広げる二人であった。

「どうして人は死んだろう?」

「生まれたからじゃない。」

「じゃあ、人はどうして生まれるんだろう?」

「お父さんかお母さんに聞いてみたら?」

「俺たちは孤児だからお父さんとお母さんはいないよ。」

「なら神父様に聞くしかないわね。」

「え~、神父様じゃ無理よ。人類の誕生の神秘なんか分かる訳がないよ。」

「それもそうね。」

 アリスとイリスはウリヤ神父様を軽んじていた。

「ウリヤ神父は死なないよね。」

「それこそ大丈夫だ。俺たちが原因で神父が死ぬなら、もうとっくに死んでいるだろうよ。」

「それも納得の理由だわ。アハッ!」

「アハハハハハハッー!」

 そして二人は神父の心配もしていた。

 つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

ワールド・オブ・リス 渋谷かな @yahoogle

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る