第8話 騎士カリス

「オリス師匠! うえ~ん!」

 アリスは泣いた。自分に戦いの構えを教えてくれ、師匠と慕っていたオリスが死んだからだ。オリスのお葬式が終わってもアリスは3日は泣き続けた。

「よしよし。泣きたい時は泣きなさい。涙が零れなくなったら、次をがんばりましょうね。」

「うえ~ん!」

 いっもはピリ辛のイリスもアリスに膝を差し出して泣く場所を提供している。まさにイリスは女神の様にアリスの前に存在している。

「決めた! 俺、師匠の仇を討つ! 教師連続殺人事件の犯人を捕まえるんだ!」

 涙が枯れ果てたアリスは、新たな決意を胸に抱く。

「やめておきなさい。」

「神父様!?」

 そこにウリス神父が現れる。

「止めてくれるな! 神父様! 俺が師匠を殺した奴を見つけるんだ!」

「無理だ。殺人犯は教師を殺せるぐらいの高いレベルの者だ。回復魔法も使えない。やっと冒険の旅に出る準備を始めたばかりのおまえには無理だ。」

「そ、そんな・・・・・・。」

 神父の言う通り、まだ子供のアリスに悪魔を倒せるような実力はない。

「いや! それでも俺は諦めない! 絶対に殺人犯を捕まえるんだ!」

 しかしアリスは諦めない。師匠を殺されて復讐の炎が燃え上がるのだ。

「無駄死にする気か?」

「な!?」

「今のおまえが殺人犯と戦っても死ぬだけだ。そんなことはオリスも望んではいまい。」

「じゃあ、じゃあ、俺はどうすればいいんだよ!?」

 神父に厳しい言葉を言われ俺の感情は行き場を失う。

「強くなれ。おまえの師匠の仇を討ちたいという思いは間違いではない。」

「なら!?」

「だが、思いだけでは自分よりも強い相手には勝つことはできない。今回の相手は小細工をしたからって勝てるような相手ではない。圧倒的に強さが違うのだ。悔しかったら強くなることだ。それしかない。」

 神父は死に急ぐアリスを止めようと必死である。

「俺! 強くなる! 修行も稽古も何でもやる! そして強くなって師匠の仇を取るんだ!」

 アリスは決意を新たに努力を惜しまずに強くなることを誓う。

「今回は安心しろ。リス国王様が騎士様を派遣してくれることが決まった。だから、もうこれ以上、誰かが死ぬということはないだろう。」

 リス国王の国。リス街、リス州、リス村、リス町、リスの洞窟、リスの塔など、アリスの世界はリスで全てできていた。

「騎士様!? カッコイイ!」

 アリスは騎士と聞いて、師匠の死を忘れ去った。騎士という言葉を聞いて心が弾んだ。

「騎士! 騎士! 騎士!」

「本当にアリスは現金ね。」

 イリスは呆れるが、いつものアリスに戻って安心もしていた。


「あの、村の役所の場所はこっちでいいのかな?」

 アリスは道で知らない大人に声をかけられた。

「すいません。知らない大人とは話すとさらわれるからいけないと神父様に教えられているので。」

 アリスは丁寧に断る。

「え!? ええ!? しっかりした子だな!?」

 大人はアリスの態度に戸惑った。

「すいません。アリスは少し頭が弱いので。」

 透かさずイリスがヘルプに入る。

「ああ!? イリス、知らない大人と喋るなよ!? 嫉妬しちゃうぞ!?」 

 アリスはイリスが大好きであった。

「はあっ!? 何を言っているのよ!? このお方は騎士様よ!」

「なに!? 騎士様!?」

 アリスは大人をジロジロと舐めまわす様に見る。

「どうも、私は騎士のカリスです。」

 大人は剣と鎧を着ている立派な騎士だった。 

「騎士様だ!?」

「今頃気づいたのか!? 一目で気づきなさいよ!」

「ガーン!」

 アリスの天然ぶりが炸裂する。

「はっはっはっ。君たちは面白い夫婦漫才だね。」

 騎士は社交辞令で言ってみる。

「はい! 俺はアリスが大好きで、将来はアリスと結婚します!」

「お断りします。」

「ガーン!」

 決してイリスはアリスの求婚を受け入れない。

「・・・・・・。」

 不幸な少年を見る目をする騎士。

「じゃあ、私は先を急ぐので。」

 逃げようとする騎士。

「待ってくれ!」

 騎士の行く手を阻むアリス。

「俺は強くなりたい! 騎士様! 俺を強くしてくれ!」

 無茶苦茶なアリスの願いだが、その目は本気だった。

「君はどうして強くなりたいんだい?」

 騎士はアリスに尋ねてみた。

「殺された師匠の仇を取りたい!」

 アリスが強くなりたい理由は、教師連続殺人犯に殺されたオリスの仇を取りたいのであった。

「やめておきたまえ。そんな心掛けじゃ強くはなれないよ。」

「え?」

「騎士わね。騎士が強くなりたいと思うのは、多くの困っている人々を守るために強くなるんだよ。決して復讐したいから強くなりたいんじゃない。それが騎士道精神だ!」

 カリスは威風堂々と騎士道精神を語る。

「カッコイイ!」

 アリスは騎士道精神に一目ぼれした。

「俺、将来はカリスみたいな騎士になる!」

 直ぐに心奪われるアリスの夢は騎士になることになった。 

「ありがとう。」

 褒められたみたいでカリスは少し照れ臭かった。

「俺は騎士になる! 騎士! 騎士! 騎士! 騎士ー!」

 アリスは騎士に憧れなりたいと思い将来の夢を見つけた。

 つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る