第217話 ヨコを除いての順位じゃがの
混血がマ人に暴力を振るった場合大きく非難される。それもマ人側に非があったとしても混血が悪いことが大半。
ヨコヅナがロード会と出会うきっかけとなったイティが襲われていた時のような「マ人の大人三人が混血の子供に危害を加えた」でギリギリ正当性が認められるぐらいだ。
「でも、懸賞金をかけられる犯罪者のマ人相手であれば、混血が暴力を振るっても非難されるどころか金が貰える」
だからロード会設立当初は『捜索』もとい『賞金稼ぎ』が稼ぎ頭の業務だった。
「最近は全然なかったすよね」
「捕マエル相手イナイ?」
「いいや、賞金首は腐るほどいる。ただ他で稼げるなら、こんな手間とリスクに見合わない業務はする必要ないのさ」
設立当初は他で稼げなかったから進んで行っていたが、犯罪者を探す手間+戦闘になって怪我をするリスク、しかも標的に逃げられればすべてが水の泡。
懸賞金は高額である事が多いものの、総合的に見て利益の少ない業務なのだ。
正直安定して稼げるようになったロード会が行うべき仕事ではない。特に最近はヨコヅナの活躍で収益が右肩上がりなのだから必要性は全く無かった。
「今から捕まえにいく相手は、手間とリスクに見合うだけの高額の賞金首ってことだべか?」
「それも違うよ。相手はチンケナな強盗団の頭、懸賞金は少額、情報屋に料金払うだけでほとんどなくなるよ」
デルファが事務所で商談していたのはロード会と付き合いの長い情報屋、賞金首のアジトを探すのはその情報屋に委託していた。
「それじゃお金とは別の利益があるだか?」
「いや、これから行うのは利益を得るのではなく、損切りの仕事さ」
今から捕まえに行く相手は仮に懸賞金が0だったとしてもロード会にとって捕まえる必要があった。
「あの建物だね」
デルファの視線の先には元は飲食店か何かと思わしき建物。廃れた外観から今はもう営業していないのは間違いないだろうが人の気配はある。
「この辺は貧困街って呼ばれてる地区だべな」
「そうだよ。貧困街には廃れた建物が多くて、小悪党が住みつきやすいのさ」
「ゴキブリみたいっすね」
「ほんとだべな」
以前ヨコヅナが貧困街に迷い込んだ時も、ゴキブリのようにチンピラがワラワラと現れただけに冗談無しに同意する。
「見張りは立ってないっすね」
「気取られない為にあえて表に見張りを立ててないのかもね。あの臆病者の事だから隠れてこっそり見張ってる可能性はあるだろうさ」
捕まえる賞金首はデルファの知り合い、と言うか来てる4人共が知っている相手。ロード会に雇われて日が浅いヨコヅナでもだ。
「デルファ作戦、ドウスル?」
「そんなものは決まってるよ。正面突破さ」
不敵な笑みを浮かべるデルファ。
「標的の頭は私が捕まえる。雑魚が10人ぐらいいるからジークとエフはそいつらをぶっ飛ばしな。ボーヤは出入り口に立って二人が討ち漏らして逃げようとするやつをぶっ飛ばしておくれ」
要はアジトにいる敵を全員殺ぶっ飛ばせてば良いってこと事らしい。
「今回殺しは無しだよ」
賞金首によっては、生死を問わずでOKの場合もあるが、今回は生け捕りが条件。
正直作戦と言えないような作戦だが、
「分カッタ」
「分かったっす」
「分かっただ」
この三人に難しい作戦が出来るとは思えない。それに、
「それじゃ始めるとしようかねェ」
デルファも加わえたこの4人なら必要もない。
建物の木製の扉に向けて手をかざすデルファ。その手から放たれた衝撃波が、ドガンっ!!と扉を破壊する。
「っ!?…魔法だべか、凄いだな」
「デルファ、1番強イ」
「会長っすからね」
ロード会で個人の強さに順位をつけるなら、エフは三位、二位がジーク、そして一位は圧倒的な差でデルファ・ロードだ。
「な、なんだ!?」
「扉が爆発した!?」
いきなり扉が破壊され中にいた男達が騒ぎだす。
「おや……宴の最中かい?良いタイミングだったねェ」
男達が手に酒瓶を持っているのを見てそう言うデルファ。
「私達も参加させておくれよ、エチギルド」
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