第155話 兄が二人いると聞いておるからの
Bランク最強と呼ばれる『閃光』の登場に会場が盛り上がる。
特に、
「キャー♡!『閃光』様よ!」
「登場の仕方もカッコイイ『閃光』様ぁ!!」
「そんなデブ、『閃光』様なら楽勝よ!!」
女性客からの声援が一気に増えた。『閃光』は強いだけでなく裏格闘試合では珍しいイケメンな為、女性からの人気が高い。
今日は『閃光』Bランクでの最終試合と触れ込みもあって、一層女性客が多い。
「凄い人気ね……でも、試合外の暴力には重い罰則があるんじゃないの?」
「内輪揉めにまで口出しはしないだろうさ」
「内輪揉め?」
「殴られたのは選手の雇い主だよ、ボーヤにビビッてたのは雇い主ってことさ」
『閃光』がなかなか現れなかったのは、雇い主がヨコヅナとの試合を断っていたからだ。
しかし、四股を踏むヨコヅナに挑発の意を感じた『閃光』は、雇い主の判断に逆らい闘技台に向かった、それを止めようとした雇い主の
「主の命令に従え!」
という言葉に、
「俺は貴様の
と通路で殴り飛ばしたのである。
暴力行為の禁止は、試合以外での選手同士もしくは観客と選手が争わせない為のルール、それは裏闘に全く得がなく寧ろ損しかないからだ。しかし、今回は選手と雇い主との内輪揉めで、しかも放っておいた方が裏闘には得がある為、盛り上がった会場に水を差すような真似はしない。
「…まぁ、私が奴の立場だったとしても、試合を断っただろうがね」
「ヨコが強いから?」
「それもあるけど、どうせやるならAランクで試合して欲しいんだよ。雇い主としては…」
「デルファ、相手の名前って『閃光』なんだべか?」
デルファの話を遮って、相手の登録名を確認するヨコヅナ。
「……そうだよ。名前から分かるように『閃光』は速さに特化した選手。金網の中を光の如き速さで動き回り、相手を瞬く間に倒……ってボーヤ…」
「え!?ヨコ…」
試合開始前なのにヨコヅナは『閃光』のいる反対側のコーナーへ向かう。
「一つ聞いて良いだか?」
「終わってからにしろ、試合前に敵と会話するのは好きじゃない」
「……でもオラ、この後もう一試合あるだよ。治療室には聞きに行けないだ」
「……さっきパフォーマンスといい、挑発が上手いようだな」
どちらもヨコヅナの素の言動で別に挑発の意はない。
「それで、聞きたい事は何だ?」
「ハイネ・フォン・ヘルシングって女性を知ってるだか?」
「……なるほどな、貴様も『閃光のハイネ』の
強くて美しいハイネは多くの
今までもこの手の質問を腐る程されてきている『閃光』は、ヨコヅナもハイネのファンだと考えた。
そういった連中は『閃光』というハイネの二つ名と被っている登録名を変更するよう言ってくる。
因みに裏闘で登録名を変更するには、再登録してCランクからやり直す方法しかない。
なので多少登録名に不満があってもの、変更しようとする者はほとんどいない。
それに、
「貴様に返す言葉は1つだ」
仮にCランクからやり直す必要がなかったとしても『閃光』は名を変えるつもりなどない。
「コネ上りのアイドル将軍『閃光の
自分こそ『閃光』に相応しいと自負しているからだ。
意趣返しのつもりで嘲罵的な言葉を使う『閃光』、それに対してヨコヅナは…
「……その言い方だと違うみたいだべな。試合前に悪かっただ」
少しホッとした表情で、謝罪をしてから元のコーナーへと戻る。
「何を話して来たの?」
ヨコヅナから試合前に相手選手に話しかけたことに驚いていたオリアがそう問いかけた。
「気になった事があっただけだべ」
ヨコヅナは深く説明しようとしなかった。
「そうなの……」
オリアが何を気になったのか聞こうか迷っていると、
「試合には影響ないんだね?」
「大丈夫だべ」
「ならいいよ」
デルファとしては相手選手に話しかけようと試合の勝ちさえすれば構わない。
それを聞いてオリアも深く追求するのは辞めることにした。
「そうだ、ごめんヨコ!デルファのせいでヨコの素性がバレるかも」
「自分には非がないみたいな言い方だねェ……」
「そうなんだべか…」
自分の素性がバレた可能性を聞いたヨコヅナは、客席の方に視線を向ける。
「……多分大丈夫だべ、少なくともエネカ姉には迷惑かからないと思うだよ」
「清髪剤売ってる店だね、寧ろ良い宣伝になるんじゃないかい?」
「ヨコが気にしないなら良いけど……」
「そんなことより今は試合に集中しな」
「そうだべな」
『何やら試合前に選手同士の舌戦があったようだが、ようやく準備完了と開始OKの合図来たぜぇ!!』
『今日はまだ4戦目だが、これがメインイベントだな』
『この試合で真のBランク最強が決めるからな!!一瞬の瞬きもを禁止だから注意しろよ!!それじゃ第三試合『不倒』VS『閃光』スタートだぜ!!』
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