第41話 分かってるではないか


 ヒョードルの治療はほぼ終わり、薬の採取・生産も専門の人達に任せていい段階にあるため、王都にいてヨコヅナのする仕事はなく、鍛錬意外は暇になるかとも思われたがそんなことはなかった。


「マツさん、荷物運び終わっただよ」

「おう、早いな助かるよ。…すまないな任せちまって」


 一つはハイネの屋敷の庭師であるの手伝い。

 専門は庭師だが庭の手入れ意外に屋敷の修繕、荷運び等の力仕事も任されている人だ。

 高齢だが体格のいいマツ。しかし寄る年波には勝てず、最近腰を痛めて仕事に支障が出ていた。

 だからハイネからマツの仕事を手伝ってくれないかと頼まれたのだ。


「これぐらいたいしたことないのじゃ」

「カルはオラの肩に乗ってただけで、何もしてないだよ」


 実際ヨコヅナからすればカルレインを肩に乗せながらでもたいしたことない量ではあった。


「前に来た見習いの若造は、ヒョロくて使い物にならなかったからな。やっぱり何でも体が資本だよな」


 マツが腰を痛めて直ぐに見習いを雇ったのだが直ぐやめてしまったのだ。

 気難しい所がありヨコヅナとは歳が離れているマツ、だがニーコ村の村長にどことなく似ておりヨコヅナは親しみやすかった。


「次は何するだ?」

「そうだな……鋏みで木の手入れやってみるか」



 大きな鋏み使って庭にある木の形を整える。


「…綺麗に切るのは難しいだべな」


 マツは簡単そうに切っていたが、綺麗に思い通りに切るには技術が必要となる。


「だが筋は悪くないぞ。背が高いのも利点だしな」

「ヨコは見た目に似合わず器用じゃからな」


 やることはかなり違うが畑の手入れを得意とするヨコヅナからすれば、植物の扱いという意味では慣れていた。

 またカルレインが言うとおりヨコヅナは手先が器用な部類に入る、素人としてはかなり上手いデキに仕上がる。

 ちなみにカルレインは一応鋏みこそ持っているが、何故かマツと一緒にヨコヅナの仕事を監督している。


「しかし主が女性にしては、この庭園は地味ではないか?」

「お嬢はあまり花とかに興味ないからな、俺も他の仕事があるから、管理しやすさを優先しちまってな」


 ここの庭は整頓されていて綺麗には見えるが、カルレインの言う通り地味であった。


「少しもったいないの……我がいじっても構わんか?」

「お嬢が許可するなら良いぞ、嬢ちゃんは花が好きなのか?」

「花に限らず、綺麗な物を見るのは好きじゃぞ」


 鋏みを動かしながら二人の話を聞いていたヨコヅナは思う。

(きっとカルは指示を出すだけで、オラに働かせるんだろうべな)と


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