3ハーレムの才覚(ソウタ視点)
僕の名前はソウタ。どこにでもいる平凡なぼっち高校生だ。
趣味はアニメやラノベ鑑賞で、誰にも邪魔されずに“一人で”それらを楽しむのが至福のとき。僕は一人が好きなんだ。だからこそ、煩わしい友達関係は最小限にして学校生活でもぼっちを貫いている。
そんな僕の私生活は、両親が仕事で海外に行っているため、高校生にして悠々自適の一人暮らし!……とはいっていない。なぜなら、つい三ヶ月前に“突然できた義妹”と実家で二人暮らしをする羽目になってしまったからだ。
本当に僕の周りは、なかなか僕にぼっちライフを送らせてくれない。
そして、今まさに、僕はその義妹と一緒に登校中なのである。
「あの、クリス。この体勢は歩き難くないか?」
僕は苦笑いを浮かべて、僕の腕を抱き締めながら隣りを歩く義妹のクリスに声を掛ける。
しかし、彼女は無言で首を振るのみ。
というか、さっきから周りの視線が痛いんだ。僕は目立ちたくないし、静かにぼっちライフを楽しみたいだけなんだ。
「どうしてこうなった……」
最近では口癖となったその台詞を呟き、その原因の一つでもあるクリスへと目を向ける。
クリスは母方の遠い親戚の子で、三ヶ月前に複雑な事情から家で引き取ることになり、僕の義妹となった。
彼女は異国の血を引いており、腰まで伸びた白金のストレートヘアと青色の瞳を持つ美少女だ。
そんな恵まれた容姿をしているものだから、とにかく目立つ。
しかも、クリスは僕のことが大好きだと公言して憚らない。
なんでも、 “ずっと昔に約束したから――”らしい。僕とクリスはどこかであったことがあるんだろうか? まさか、前世で……とか?
「ハハっ、まさかね」
思わず、苦笑い。
するとそこに、目の覚めるような明るい声が掛けられた。
「朝からいやらしい顔でにやけてますねっ、せ~んぱいっ♪」
飛び跳ねるように僕らの前に現れたのは、義妹のクリスと双璧をなすと言われている一年生の中でもカワイイと評判の小悪魔系美少女――リンカだった。
「おい、いやらしいなんて人聞きが悪いぞ?」
「え~、でもぉ、今だってあたしの胸をいやらしい目で見てますよねぇ?」
リンカが空いている方の僕の腕に抱き付いて来て、一年生にしては大きい胸を存分に押し当ててくる。
「べ、別に!み、見てないからなっ!」
「くふふっ、焦ってる先輩、かわいいですよ♪」
リンカが続けて“先輩になら平気ですよ?”と小さな声で耳打ちしてくる。
その発言に、僕は少しだけ眉をしかめた。
リンカはある出来事から、男性に対して苦手意識を持っている。
それは、まだ入学当初のころ、可愛くてスタイルの良いリンカは、学校帰りに不良グループに襲われそうになったことがあり、それが今でもトラウマとなって尾を引いているのだ。
ちなみに、そこを成り行きで助けたのが僕。
あのときは、僕がマジになって武術の構えをとり闘気を放ったことと、一緒に居合わせたユキヤのデカい図体の見てくれもあってか、戦わずして不良グループを撃退することができた。
それ以来、僕は小悪魔系美少女のリンカにまで懐かれるようになってしまったのである。
あぁ、ますます遠ざかる僕のぼっちライフよ……。
そうして、今も二人の美少女に両腕を取られつつ僕が自分の境遇を嘆いていると、今度は前方から、清涼感のある凛とした声が掛けられた。
「ソウタ君、おはよう」
そう挨拶をしてきたのは、容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能である完璧超人生徒会長――アザカ先輩だった。
「おはようございます、生徒会長」
「むっ――“アザカ”だ!」
「あ、アザカ先輩……」
ぐっと顔を寄せてくる先輩にたじろぐ僕。
そんな僕と先輩との出会いは、至って普通のよくあるシチュエーションでのこと。
ある日、僕がいつものように学校の屋上でぼっちタイムを満喫していたところ、アザカ先輩に声を掛けられたのが始まりだ。
『そこのキミ!生徒会で私の右腕になってくれないか!?』
先輩はすごく強引で、最終的には僕が折れて生徒会の“雑用係”をすることになった。
あまり本気を出して本格的に生徒会に引き込まれても困る僕は、常に影に徹して仕事の功績は本来の生徒会の方々に譲る形を取り、その行動がかえってアザカ先輩の琴線に触れたようでますます気に入られてしまった。
そうして、当時を思い出しながらも、僕は今現在目の前で繰り広げられる三人の美少女によるやり取りに目を向ける。
「二人とも、兄さんから離れてください」
「え~、クリスちゃんが離れれば良いじゃ~ん」
「まったく一年は騒がしいな、私と先に行こうかソウタ君」
三人がいつものように僕の腕を取り合っている。
その姿を見て、ふと思った。
「あれ? そういえば、カナエがいなくないか?」
いつもなら、一歩下がったところから、僕らを笑って見ているのに……。
「そういえば、いつも待っている場所にいませんでしたね、兄さん」
「寝坊ですかねぇ? カナエ先輩ってのんびりした感じありますし」
「先に登校している可能性もある。私たちが学校に着いて、本人の不在を確認してから電話なりメールなりするのが良いだろう」
僕は再び溜息をつきながら肩をすくめ、ゆっくりと首を振った。
まったく、仕方ないなカナエは、本当に世話の掛かる幼馴染様だよ――。
「それじゃあ、行きましょう兄さん」
「ですね!レッツゴーですっ!」
「おい、キミたちはもうソウタ君の隣を十分に堪能しただろう?次は私の番だ!」
また、僕の腕の取り合いが始まった。
本当に勘弁してくれ。僕みたいな根暗なぼっちには、周りの視線がかなり痛いんだ。
こうして、僕のぼっちライフは侵食される。
はぁ……やれやれだ――。
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