第99話 第二回・戦力を把握しよう
取り敢えず、二人の話を纏めたいと思う。俺達が拠点を置くこの島から最も近くにある大陸は、穏やかな気候と比較的平和な時世にあるフォークロア大陸。その中に存在するサウスゼス王国には、『秩序』の駒、サウスゼス王国騎士団団長のジーク・ロイアという奴がいる。何でも個人の戦闘力では駒の中でもトップ争いをするらしく、可能な限り敵対はしない方が良い相手であるそうだ。とは言っても、争奪戦なのだから最初から敵対している訳だし、こちらとしては遭遇しないように努力するしかないのだが。更に補足すると彼のいるフォークロア大陸には、他の駒としてはモルクが活動していたとの事。
「アンタ、どっちにしろ最初に脱落してたんじゃないかい?」
「う、うるさいわい! だからこそ、圧倒的な力を誇るアークを欲していたのだ!」
……アークの力を抑えている鉄球、取り外す方向で前向きに考えないとかな。取り外す為の解呪の鍵(銀)、確か10万DPは軽く超える、やべぇお値段だったけど。
次に近いのがキアスプーン大陸、何でもこの世界で一番でかい大陸なんだそうだ。その大陸内には、魔法と学問に富んだクロスベリアという魔導王国があり、『魔導』の駒であるパー・ワッフルという賢者が日夜怪しげな研究に勤しんでいた。 ……のだが、バルバロが先ほど話した通り、同じ大陸にある神皇国ラヴァーズとの戦争に敗れ、パー・ワッフル含め多くの魔法使いと学者がラヴァーズに吸収されてしまったらしい。
この神皇国ラヴァーズは世界最大の宗教団体でもあるそうで、人類の二割はラヴァーズ教を信仰しているとも噂されている。当然、この国も争奪戦とは無関係ではなく、聖女として崇められるアイ・ラヴァーズが『慈愛』の駒として動いている。表向きは聞こえの良い言葉を並べ、裏では海賊以上に非道徳的な事もしているんだとか。宗教の規模が規模なだけに、信者の数も尋常ではなく、非常時に動かせる兵力は駒の中でも断トツである。
「綺麗に着飾ってはいるけど、あの教団はアタシの嫌いな臭いがするんだよねぇ。笑顔で近付いて来て、不意に銃口を頭に当てる感じ? 絶対裏があるよ、裏が。元海賊頭の勘がそう言ってるよ」
「仕事の関係で何度か彼の国に奴隷を下した事があるが、どいつもこいつも妄信的で不気味だったわい。あの聖女、ワシ以上に薄暗い経歴があるな。元奴隷商としての勘がそう言っておる」
珍しくこの二人の意見が揃っている事からも、ラヴァーズという国とその聖女が如何に危険であるかが分かる。 ……というか、今近くにいる神の駒って、やばい奴らばっかりじゃないか? ジークにしてもアイにしても、一筋縄では行かない予感しかしない。
で、二人が分かっている範囲で残っている神の駒は、キアスプーン大陸よりも更に離れた位置にあるべナイフ大陸に『戦』の駒が、そこからまた離れた最遠の地、ハシラノ大陸に『大地』の駒がいるんだとか。遠いとなれば当たるのは後になるんだろうが、頭の片隅には入れておこう。
そしてラスト、『原初』と『
「マスター、情報共有をするのでしたら、バルバロさんとモルク料理長のステータスについても、この場で共有しておきませんか? 神の加護がなくなったとすれば、ステータスの記載も本来のものに戻っていると思いますし」
「ああ、そういや二人のステータスの共有もまだだったか。確か、バルバロ達もまだ確認していないんだったよな? ここで皆に見せても良いか?」
「クリス総料理長がそう言うのであれば、ワシは一向に構わん」
「まあ、仲間に見られて困るもんでもないしね。アタシも今の自分の力を知りたいし、良い機会さね」
話が纏まったな。アークやトマリンのステータスを表示した時と同じように、皆に見えるよう調整を行う。 ……よし、これでいける筈だ。決定ボタンをポチっとな!
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バルバロ 25歳 女 人間 奴隷海賊
HP :120/120
MP :0/0
筋力 :C+
耐久 :C-(+1⇒C)
魔力 :F+
魔防 :E-
知力 :D++
敏捷 :B
幸運 :A--
スキル:狙撃D
スキル:航海術B
スキル:軍団指揮C
装備 :黒の眼帯
隷属の首輪
海賊衣装(耐久+1効果)
ブーツ
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モルク・トルンク 48歳 男 人間 奴隷料理人
HP :50/50
MP :0/0
筋力 :E
耐久 :D+(+1⇒D++)
魔力 :E-
魔防 :F+
知力 :C
敏捷 :F-
幸運 :D
スキル:調理C
スキル:なし
スキル:なし
装備 :コック帽
隷属の首輪
豚さんエプロン
調理服(耐久+1効果)
革靴
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「わあ、バルバロの姉ちゃん、すっげー能力値じゃん! 見直したよ!」
「そうかい? 前に比べると全体的に能力が落ちてるし、スキルの構成も変わっちまってるんだけどねぇ。まっ、元々のアタシの力と考えれば、妥当なところか」
「いやいや、バルバロは少し不満みたいだけどさ、一般的な人間視点で考えれば、ステータスもスキルも尋常でないほどに高いよ。アークとバトッたのも納得の強さだ」
「フッ、もっと褒めると良いよ、頭(かしら)!」
あ、不満気から満足気に、機嫌がクラスチェンジした。ま、まあバルバロの機嫌をさて置くとして、彼女のスキルは正に海賊をする為のもの! って感じだ。今後、力を貸してくれるとすれば、大いに活躍してくれそうである。
「ワシのステータスは元から戦闘向きではなかったとはいえ、ここまで下がると軽く眩暈がするな。すっかり一般人のそれに、毛が生えた程度になってしまったわい」
「いえ、モルク料理長もなかなかかと。特に調理スキルは鍛え甲斐があります!」
「そ、そうでありますか? クリス総料理長に期待して頂けるとは、これ以上に光栄な事はありません!」
「んー、もう結構な歳だから、下げる能力も多いと思うけどねー」
「ぐふっ……!」
「ア、アークさん!」
吐血してるモルクに関しては、トマやリンと同じくらいの能力値になっている。本人が言う通り前線向きではないけれど、調理技術やこの世界で培った知識を活かして、後衛支援役として期待したい。あ、そうだ。ついでにスキルの詳細もペタリ。
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スキル:狙撃D
道具を用いて弾を飛ばし、標的に当てる事においての知識、技術を得る事ができる。Dランクであれば優秀なスナイパーのレベルとなり、射程距離にあればかなりの精度で命中させられる。
スキル:航海術B
航海するにおいて必要な知識、技能を得る事ができる。Bランクであれば船乗りとして比肩する者が他にいないほどで、自然に存在する海であれば、どこにでも航海する事が可能となる。
スキル:軍団指揮C
大人数を指揮する事で結束を強め、集団で発揮する力を高める事ができる。Cランクであれば天才的な指揮官として指示を出し、配下の者達を自身の手足のように動かせられる。
スキル:調理C
調理するにおいて必要な知識、技術を得る事ができる。Cランクであれば天才的な料理人のレベルで、どのような店でも長として活躍でき、コンクールに出場すれば優勝を争うほどになる。
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情報共有はこんなもんかな? さて、将来的に戦う敵の姿も段々と明らかになってきた事だし、これから更に忙しくなりそうだ。貯まったDPの有効活用、ユニークモンスターの発現、それに第3ダンジョンの創造――― うん、過労で死なないように努力しよう。
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