第19話 雷鼓と男の関係

アンから向けられる闘志が無くなると男は安心したようで構えを解く。そして一息つくと「…何故、急に我々と闘う意思が無くなったのですか?」と静かに私へ向けて静かに聞いた。それに対し私は「…2人からは殺気が感じられず、貴様がその気ならあの双子をあのまま殺す事も出来たはずだ、しかしそうはせずアンと殴り合いを始めた、私はそれをただ欺瞞だと思っていたが…アンへトドメを指す様子も無かった、更にこの少女と話をして我々が思った相手達とは全く違うと確信しただけのことだ」と答えるが彼は頭を捻り、納得、と言うよりも理解ができない、というような様子だ。そのため私は続けて「…勇者、という存在は知っているかね?」と言うと雷鼓が「知ってるよ!!世界を救うすごく強い人だよね!!」と答える。それに対し「そうだ、そしてその勇者に対し、魔王と呼ばれる存在についてはどうかね?」と言う言葉に雷鼓は「うーん…悪いことをするすごく強い人?」と言う。私は彼女の言葉を聞き「2つともあっている。そしてにわかには信じられないだろうがこの国では何度もその勇者と魔王の戦いが繰り広げられている」というと少女は驚いたようでそんなことがあるんだ!!と言っている。「いや、先程の表現は少し違うな…この国は多くの魔王に襲撃され、そしてその度に勇者と呼ばれるであろう存在が時には魔王を滅ぼし、またある時は魔王の暴走を鎮めてきた、そんな国だ」

そんな私の言葉を聞き、雷鼓だけでなく、男も驚きを隠せない様子だった。そうしていると「でも…おーさんが排除される存在っていうのには繋がらないよね?だっておーさん悪いこと何もしてないもん」と雷鼓が口を開く。それに対しアンが「…まぁたしかにまだそのオッサンは何もしてない、だけどこれからも何もしない、という保証が無かった、それどころかあたしらが遭遇した魔王たちと近い匂いを感じた、そうとしか言えないね」と言うと男は納得したようで頷き、そして「なるほど、確かに私の能力は悪か正義か、となるとどう見ても悪の能力、納得です」と言うと雷鼓は「しかもおーさん人相悪いって先輩達とか他の先生にも言われるもんね、僕のママも初めておーさん見た時は怖かったって言ってたもん」と笑いながら言うと男は「よく言われます、しかし顔だけは自分でもどうしようもないことなんですよ?」と笑顔を浮かべながら答える。見方によっては親子にも見えるがどうも違う気がする、そのため私は「…所で…二人の関係は…なんなのかね?親子にも見えるが…違うのだろう?」と聞くと男が「関係、ですか?雷鼓くんの先程の話で察して欲しかったですが…教師と生徒の関係です」と言うとすぐに「見たまま私が教師、そして雷鼓君は生徒、ですまぁあなた方の考える学校とは少し違うかもしれませんが」と言うとユキが「学校…ですか?それも普通とは少し違う?」と言うと男は「はい、勉強を教えるのではなく、ファイターとして生きていく者達を育てる学校です」と答える。

ユウが目を白黒させていると男は「そういえばまだ挨拶もしてませんでしたね、私は大沼、大沼蛾嫩おおぬまがのん、そして彼女は堀内雷鼓ほりうちらいこ…我々の事はお好きな呼び方をしてください」と言う。

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