第18話 豪腕対豪腕

マスターと雷鼓がユキ達と距離を開けている間もアンと彼の真正面からのお互いが全く避けない殴り合いは続いていた、彼の拳や蹴りに合わせ、アンはカウンターを決め続ける、というどちらが何時倒れてもおかしくは無い攻防を繰り広げ続けていた、いや普通の人間ならお互いとっくに倒れている様なダメージの筈だ。男がアンへ向けて拳や蹴りを放ち、アンはそれを受けながらカウンターを放つ…見た目だけでならそこまで派手な闘いではなく、それこそ子供の喧嘩に毛が生えた程度に見えるだろうが互いの威力が桁違いすぎる、男の攻撃は確実にアンの骨を折り、アンのカウンターも普通の男が喰らえば死にはしないだろうが気絶していてもおかしくは無い威力だと言うのにお互いが全く譲らず、拮抗状態が続いていた。

すると突然男が口を開き「…このままでは勝負がつかないですね…そろそろ…決めさせて頂く!!」そういうと男は棒立ちでは無く、構えた。アンはそれを見るが構わず打ってこいよと言わんばかりに挑発を続ける。

男はその姿を見てニヤリと笑うと左足を半歩前に出し、そのまま右足で地面をえぐりながら右腕でアンへ向けアッパーを放つ、アンは地面がえぐられるほどの踏み込みは想像していなかった様子で舌打ちをしながら初めてガードした、しかし男の拳はガードしたアンの腕の骨を折り、更にアンを50センチ程浮かせる程の威力であり、流石のアンも全くの想定外であった為反応が一瞬遅れた。男はそれすらも見逃さず、アンへ対しアイアンクローで掴み、そのまま黒炎を放ちながら地面に叩き付け、離すと同時にカカト落としを繰り出す…ご丁寧に黒炎のおまけ付きだったらしい。ユキ達も流石のアンでもあれほどの砂埃が舞う威力の攻撃を喰らえば回復に時間がかかるだろうというのは容易に想像できた。

男は構えを解き「これで倒れてくれたら楽ですが…」と言いながら2歩ほど下がり、アンが立ち上がるかどうかを見極めようとしているらしい、とりあえずはそのまま攻撃を行うという意思は無いように見える、すると直ぐにアンの笑い声が聞こえ、立ち上がる「やってくれるねぇおじさん…この私にここまでのダメージを与えてくれるなんて…久しぶりだ…」と頭から血を流しながら男へ獣のような敵意丸出しの視線を向けている。その姿を見て男は溜息をつきながら「…やはり…止まらない、ですね雷鼓君の居る手前さすがに…」と困っている様子だった。

攻撃してこないのを見てアンはそのまま凄まじい速さで男へ肉薄しようとするがアンの足元へ数本の剣が突き刺さり、更に男とアンの間に雷鼓と呼ばれている少女が男を庇うように立ち塞がる。するとアンはそのまま止まり「どういうつもりだ?マスターさんよぉ…まさかこいつをこのまま帰す、なんて言わないよなぁ?」と剣を飛ばしてきた私へ獣のような瞳を向けた。それに対し「…貴様ももう気づいているだろう?彼らは我々に対して敵意は無い、仮にあったとしたら先程の攻撃…まだ続いたはずだが?」と返し、続けて「暴れ足りない、というのならこのまま相手してやるがどうするかね?」と言い、槍や剣を空中に浮かせ、切先をアンへ向ける。するとアンは「OK分かった、流石の私でもこの状況でアンタに逆らう程めでたい頭じゃない、今回は諦めてやるか」と言いながら手をヒラヒラと振っている。

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