第16話 新たな来訪者の2人 後編

アンの先程の言葉、それは彼に対し、全く恐怖を感じていないという事を彼ははっきりと理解しているのだろう、そのうえで彼は「ほう?お仲間が全くダメージを与えることが出来ない上に返り討ちにあっている、というのにその余裕…興味深い」と言うと双子には興味が無くなった様子でアンのみを見ている。彼の連れであるであろう少女はワクワクとした様子で戦いに見入っている。

アンはと言うと「…来なよおじさん…それとも何かい?カウンターしかできないヘタレかい?」と言うと彼は「自分よりも年下の子供たちへはハンデとして先に攻撃を譲っているだけですよ?」と笑いながら言うと続けて「お嬢さんもどうぞ?まぁ半端な攻撃の時は…」と言うとアンへ向けて闘志のこもった眼差しを向ける。それに対し「おじさんよりも私の方が歳下?残念ながらあんたよりも若いのはその双子だけさ、ほら、早く打ってきなよ」とアンは彼の制空権に入り挑発を続ける。

彼はその挑発に対し「そうですか、ではお言葉に甘えて胸を借りましょうか?…右手正拳突き、上段でガードした方がいいですよ?」

と言うとシャインを一撃でのしたあの黒炎をまとった拳をアンへと放つ、アンは両手でガードするが彼の拳の威力が高すぎるのだろう、数メートルほど後ろに下がらされており、右腕の骨が折られているのが私やユキの位置からでも分かるように曲がっては行けない方向へ曲っていた。

だがどこか余裕がある様子だ、その余裕の意味を確かめる為、私は彼の様子を良く観察する、すると何故か彼はシャインを殴り飛ばした時とは違い、何故か上空を見ている。

するとアンは「…チッ思ったよりも重いし硬い…でもアンタの予想よりは効いただろ?」と言った。そして彼は地面に向けて血を吐き捨てると「殴られる瞬間に顎に向けて蹴り上げ、確かに並大抵の人間なら今ので倒れていたでしょうね…」と言った。先程までとは全く空気自体が違う。そう、先程までは彼自身大きな余裕をもっていたが本気になったのであろう、殺気、とは違う緊張感が辺り全体を締め付けている。今まで多くの死線をくぐり抜けて来た我々だが今までとは全く違う緊張感に包まれていた。恐らくこれが闘気、という物なのだろう、その肌を突く様な闘気を放っている彼はアンへ向けてゆっくりと歩き、距離を詰める。彼の様子は既に倒した双子だけでなく、私やユキ達も目に入って居らず、ただ純粋にアンを倒す事のみに集中している様だ。

あと2歩進めば完全に彼のリーチ、と言うところで彼の足元へ1本の槍が突き刺さる。それを見て彼は「雷鼓くん、君も手合わせ願うといい、私は私の目の前の彼女、君はそこの白髪の彼と手合わせと行きましょう」と言うと雷鼓は「分かった!!」と元気よく返事をした。そして私の前へ立つと「よーしじゃあ僕達も始めようかお兄さん!!僕も頑張って戦うぞ!!」と言いながら構える。その姿を見て私はナホへ「大丈夫だと思うがユキの警護…任せるぞ」と言うとナホは何も言わず、ただ頷くのみだった、私はナホの返答を確認すると1歩前へ出、地面に刺さっている短剣を二本抜き、構える。

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