第10話 同じ世界から来た者たちとの食事(後編)

何度も頭を叩かれればいくら私と言えども不満は有る。そのため私は反論した「…何度言えばわかるのかね?私の頭は叩かれる為に有る訳では無いしそもそも盆も叩くために存在している訳ではない」と言うがユキは「何度も頭を叩かれるようなことを言う方が悪いんじゃない?」と平然と言う、そのためさらに私には不満が溜まり、「それに頭を叩く、という行動にはリスクがある。私が居た世界では頭を叩けば叩くほど脳の細胞が多く死に、記憶力に影響を与える、と言われていた、闘いの記憶はいいとして料理の記憶まで失ってしまったらこの店をどうするつもりなのかね?」と私が言うと「だったらこれからはあなたのその人を煽る部分の記憶が無くなるように叩けばいいのね?」と返してくる、それに対し私が反論する、というのを数分繰り返しているとアリアが口を開き、「お腹が空きました、これ以上おふたりの喧嘩は聞いてられないです」と言うと2人がかりで作った料理を食べ始める、先程まで中華粥を食べていたとは思えないほどの速さで食べていく、そのアリアの姿を見てユキは「多分暫くお客さん来ないと思うし…たまには同郷のおふたりと食事でもしたら?」と言い、私の背中を押し始める。ナホはそれを聞き「そうですよマスターさん、お仕事中は食事されませんしこんな時くらいゆっくりと食事をされたら良いじゃないですか」という。その2人の言葉を聞き、アンは何も言わず私の分の皿と箸を出し、アリアの隣の席に置いた。この3人にそこまでされたら流石の私も観念するしかなく、大人しく席に着くことにした。ユキはその私を見て「いつもこの位素直に私の言うことを聞いてくれていると楽なんだけど?」と胸を張りながら言った為「私はいつも素直なつもりだが?」と返した。するといつも間にやら食事を始めていたリンが「酒はねぇのか?ユキこんな新鮮な魚料理酒がねぇと持ったいねぇ」と言い始める。それに対しユキは「ご存知の通りうちは喫茶店なのでお酒類は無いです」と営業スマイルで答えていた。アリアは最初のスピードこそ早かったが3人で食べる事になった為気を使ってか普通の人間が食事している程度の速度になり、料理を味わっているようだ。私もゆっくりと食事をしながらアリア、リンと会話をしたり、アリアの愚痴を聞いたりしていた。…あまり認めたくはないが同郷の2人との食事が楽しく、時間があまりにも早く経ちすぎており、気がつくと午後の3時前になっていた、遅めの昼食だったとはいえここまでゆっくりしていたのはこの店を始めてから初めての経験だった。

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