第7話 もう1人の仲間と腐れ縁(前編)

彼が店から出て私は一安心した、何故なら彼は異例の若さ、速さで軍の幹部へと昇進していた為だ。その様な彼が国王へ報告すべき案件をそう簡単に見逃す訳がなく、仮に彼にサクラ達との会話を聞かれていたら間違いなく王宮へ我々は連行されていただろう…今回は彼が本当に食事に来ていたことに感謝するしかない、そう思った。

そしてユキが彼の食器を片付け始めると扉が開き、金髪の10代に見える少女が入ってきた。そして彼女は口を開き

「久しぶりに戻りました、仕事が思ったよりも多く、お腹がすきました」

と金髪のアホ毛をピコピコさせながらカウンターの真ん中の席に座りながらそう言った。アンは彼女が席に座るや否やすぐ横に座り

「久しぶりだね〜アリアなかなか帰ってこないからマスターがイライラしてたよ?」とこちらの顔をニヤニヤしながら見つつアリアに話しかける、その様子を見てユキと双子はクスクスと笑う、そうすると彼女は「心配をかけました、ア…いえ、今はマスターでしたね」と私に頭を下げる。

「いや、君が無事ならそれでいいのだ、それにしても君が手こずるような仕事の量とはな…また大規模な盗賊団が潜んでいたか魔物でも大量発生していたのか?」と私が問うとアリアは「両方でした、と答えられたら良かったんですが…その盗賊団が魔物を使役してたので余計に厄介でした」と言った、そういえば彼女の鎧はところどころ傷があり、戦いがいかに厳しいものだったのかを物語っていた。

「その様な大規模な戦闘なら君だけでなく応援を呼べばよかったのではないかね?それこそギルドや軍が動かなくても我々が動いたぞ?」と言うと彼女は「最初は呼ぼうと思っていたんですが…姑息な事に私を街に戻さない様に包囲されて仕方なく少しづつ削って、を強いられました」と彼女が言うと腹の虫が限界を迎えたのかグーという音を出した。

「その様な大規模な戦闘の後なら消化にいいものが良さそうだな、すぐ作るから待っていてくれ」と私が言うとアリアは早めにお願いします、とだけ言うとアンと笑いながら話し出す。ナホは私の傍に来て「消化にいいもの…お粥ですか?」と聞いてきた為私は「ああ、今回は彼女へ少しでも満足感を持たせるために和風ではなく中華粥、だがな」と言うとナホは「中華粥、ですか聞いたことはありますがまだ食べたことないですね」と言った為「では作り方を見ておくといい、基本の調理は和風と変わらんが1部違うのみだ、君ならすぐ覚えるだろう」といい、出汁用の乾物を入れている引き出しからヒラメによく似たこの世界の魚の干物を出し、軽く炙り、鍋に湯を沸かす。干物から香ばしい匂いがし始めるとその干物を鍋に入れ、出汁をとる。その調理を見てナホは「…その魚はそう使うように用意してたんですね?」と言った為わたしはそうだ、と答え、米を研ぐ。米を研ぎ終わると次はニラを1センチ程の長さに切り、細いフランスパンを薄切りにしていく。そうしているうちに干物は出汁をだし、水分を含む、そうしたら骨を除き、米を加えてさらに炊いていく。

「本当にほぼ和風のお粥と同じ調理工程ですね…強いて言うなら出汁をとったのと具材が変わっているくらいであとはほぼ同じですね」と言った為だ私は「そうだ、今回はこの魚で出汁をとったがかになどでも美味いが今回はちょうどいいカニが無かったのでな、まぁカニでも基本は同じだ」と言った。

そうすると米も煮えて来たため、味付けとして魚醤を加え、切ったニラを半分入れて混ぜ、ひと煮立ちさせてからもう半分のニラとフランスパンを鍋に入れ、蓋を閉じてアリアの前へ出す。

「出来たぞ、かなり熱いので気をつけてくれ」

と私が言うと扉が勢いよく開く。

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