第7話 激闘の朝
オットイが目を覚まし、手を伸ばして近くに置いてあったメガネを取った。
かけてやっと見えるようになった目の前には、ネグリジェ姿のティカが眠っている。
露出度は少ないはずだが、肌色が透けて見えているので露出度は逆に多いのではないか……というか、なぜ同じベッドに眠っているのだろうか。
「僕は普通、床じゃないの……?」
彼が在籍している
ベッドなど、寝かせてもらえないのが当たり前だった。
そのおかげか、数ヶ月ぶりになるだろう、気怠さがなく一日の始まりを迎えた。
それに、環境がまったく違う目覚めだ。
枕が柔らかい。
暖かい毛布が体を覆う。
両開きになっている窓の先から吹き込む涼しい風。
部屋全体を照らす日差しがあった。
オットイが体を起こそうとしたら、腕が引っ張られた。
ぐっすりと熟睡しているティカが腕を抱いていたのだ。
少しの力では、引っ張って取る事もできない。
オットイの腕は、昨日見た限りでは分からなかったが、彼女の大きな胸の中に埋もれてしまっている。
「うわあ、すごいなあ……」
その時に想像したのは壁であった。
旅団にいる幼馴染みの少女が、これとは対極の位置にいるので連想してしまった。
もしも彼女がこの場にいれば、その時の空気感だけでオットイが思った事を見破られていただろう。
……多分、ぶん殴られていた。
「……なんかごめん、プリムム」
とにかく、腕を抜かなくてはオットイはなにもできない。
起こしたくはなかったが、ティカの力には勝てないので不本意だが起こす事にする。
ティカの肩を優しく揺する……が、寝息を立てているだけで起きる気配はない。
強めに揺する。
するとティカが嫌がる声を出して、思わず手を止めてしまったが、このままでは振り出しに戻るだけだ。
もう少し強く揺すってみる事にした。
「ティカ、起きて」
まぶたが半分ほど持ち上がり、抱きしめられていた腕への力も大分緩くなった。
覚醒するまでそう時間もかからないだろう。
ただ現段階では、まだ腕は取れなかった。
「あぁー……」
ティカはまだ半分ほどは夢の中にいるらしく、体を起こしてもふらふらと落ち着いていなかった。
倒れそうで倒れない、ぎりぎりのところを行ったり来たりしている。
しかしやがてバランスを崩し、再び枕に顔を埋める。
オットイの腕も抱きしめたままであった。
そのためオットイもまた、ベッドに横になる羽目になってしまう。
どうやら優しい起こし方では太刀打ちできないらしい。
「ティカ――起きてよ!」
肩を掴んで体を無理やり起こさせた。
正座をした状態で向き合う形になる。
その時、部屋の扉が開き、
「オットイ、起きたか? ティカの事なんだけど、無理に起こすと――」
ベッドの上のオットイとティカを見て、ウィングは全てを理解した。
「……悪い、少し遅かったか」
「な、なにが……」
オットイは苦笑いを返し、ウィングが頑張れ、と手を振って立ち去った。
扉を閉めなかったところに、オットイは少しだけ救われた。
寝癖だらけで服も乱れて、だらしない姿のティカは髪の毛をくしゃくしゃと掻く。
腕の拘束は解かれたが、彼女に睨み付けられ、逃げられる状況ではなかった。
次に胸倉を掴まれた。
ぐっと引き寄せられる。
至近距離で彼女の言葉を聞いて、覚悟が決まった。
「歯ぁ、食いしばれ」
その部屋は二階だったのだが、どたばた音は一階にいるウィングにまで聞こえた。
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