第9話 ボーイ・ミーツ・ガール
「ラスト一周」
五回目のスタートラインを超えた時、西村がコールした。
綾乃との距離は後方20メートルから15メートルくらい。
(綾乃のヤツ少しペースを落としたな)
四週目までのペースなら、すぐ後ろに綾乃がいてもおかしくなかった。
(息切れか? 作戦なのか?)
ともあれ人の心配していられる余裕などぼくにはなかった。
(どこで仕掛けてくるか分からない)
このまま終わるなんて考えられなかった。
綾乃の持ち味は後半の粘りなのだから。
(それでも、おれは負けたくない)
自分の間違いは、自身で取り戻さなくちゃいけないんだ。
*
「もういいよ、バカ!」
玄関を飛び出した綾乃の後姿を見送ったぼくは、振られたのは自分だと思った。
(終わった……)
これでいい筈なのに、張り裂けそうな程ぼくの胸は苦しかった。
綾乃が残した甘酸っぱい匂いが切なかった。
気づくと、開け放たれたドアの向こうに西村が立っていた。
ぼくはどんな顔していたのだろうか。
西村はどう言葉を掛けていいのか分からない、といった風に困惑した顔で立っていた。どうやら丸聞こえだったらしい。
「やあ」
とぼくは笑みを浮かべたつもりだったが、頬がつっているのが自分でもわかった。
「大丈夫か? 貴樹」
西村も苦笑いを浮かべた。
「入るぞ」
勝手知ったる幼馴染の家といった所だろう。西村はドアを閉めて入ってきた。
「無様なところを聞かれてしまったな」
西村はその言葉には反応を示さなかった。
「まだ、めぐみの事を引きずっているのか?」
いきなり本題に入ってきた。
「忘れられないのか? めぐみが」
ぼくは小さく首を横に振った。
「アイツへの思いはもうないよ。でもな、裏切られた思いだけは忘れる事が出来ないんだ……」
「それでも、いい加減前を向けよ。早瀬はいい女だと思うぜ。美人だし性格だっていい。そのくらいお前だって分かっているよな」
「分かっているさ。分かっているけど、めぐみだって同じだったんだ。それなのに…」
ふいに高柳と唇を重ねるめぐみの顔が一瞬頭を
きっと西村もあの時の光景を思い出したに違いない。
「そうだよな」
西村は眉をひそめた。
「でもな、早瀬も同じ事をすると思うか? あいつだけは違うと思えないのか?」
「だから! それはめぐみも同じだって言っているだろ!」
声を荒げてしまった後でぼくは目線を落とした。
「おれは信じていたんだ。いや、信じるとか疑うとかそんな言葉すらおれにはなかったんだ。大好きだった……。大切に思っていた……。おれの全てを捧げてもいいって思っていたにの……それをいとも簡単に、あんな形で裏切るなんて……。今でも、信じられないよ」
「お前の気持ちは分かるよ。でもここで早瀬を
「もうしてるよ」
綾乃を拒絶した後で、ぼくは初めて気づいた。
いや、それは嘘だ。
ぼくは初めから、そう、さくら散る渡り廊下で綾乃を見た時から惹かれていた。
校庭を疾走する綾乃の姿に、弁当を持ってぼくの向かいに座る綾乃に、ぼくは恋に落ちてしまう予感がした。
だから逃げた。
恋に落ちたら後戻りできない自分を知っていたから。
惹かれてゆく気持ちを
(おれは早瀬が好きだ)
その思いが強いほどに、伸し掛かってくる不安も大きくなっていった。
「逃げるなよ、貴樹」
西村がぼくの手首を
「今のままではダメなんだよ。お前だって分かっているはずだ」
ぼくはその手を振り払った。
「ああ、分かっているよ。けど、これはおれの問題なんだよ。お前には何の迷惑もかけちゃいないんだ。放っておいてくれよ」
「貴樹」
「いいよもう。出て行ってくれよ」
ぼくは西村を玄関から押し出した。
「貴樹!」
「出て行け!」
玄関のドアを閉めた後、ぼくは自分の行為に嫌悪した。
(こんな自分が嫌いだ!)
ぼくは玄関口の柱を殴った。
東京から戻ってからのぼくの夏休みは、
かなりの時間を費やした身に入らない勉強は、時間の無駄遣い以外の何物でもなかった。
夏休みの最終日、三週間引きこもっていたぼくは、久しぶりに南中学のグラウンドに、朝早くやって来た。
「やあ、堀内。来てくれてありがとう」
葛城先生がグラウンドに足を踏み入れるぼくを出迎えてくれた。
数人の後輩たちも付いて来ていた。
「堀内先輩お久しぶりです」
「元気してましたか?」
「よろしくおねがいします」
いずれも三年生だった。
「部室にどうぞ。ちょっとした飲み物とお菓子を用意してますから」
両手を女子の後輩に掴まれ部室へ誘われた。
代り映えのない懐かしい部室の机には、スナック菓子とペットボトルのジュースが置いてあった。
「お前たち三年はもう練習に来なくていいんじゃないのか?」
ぼくは後輩たちに聞いた。
全国大会にでも出ない限り、三年生は一学期終了とともに引退するものだった。
「ええ、引退はしました。後輩の面倒を見に来たんです」
とひとりの女子が言うと、別の男子が引き継いだ。
「本当の理由は、今日堀内先輩が来るって言うんで、おれたち集まったんです」
「そうだよ堀内」
と葛城先生がぼくの肩を叩いた。
「二年で全国大会優勝した時、一年生だった彼らから見れば、堀内はスーパースターだからな」
「やめてくださいよ。もう、ぼくは
そう、後輩たちには怪我のため陸上選手としては
「ともかく、突然呼び出して悪かったな」
昨夜、珍しく葛城先生から、練習を見てやって欲しいと電話があったのだ。
「堀内先輩」
と更に年少の後輩たちが部室に入ってきた。
知った顔、知らない顔で、一年生か二年生か区別できた。
とは言っても、今の二年生と過ごした時間は、一ヶ月も満たないものだったが。
「聞きましたよ、堀内先輩」
目をキラキラさせてぼくの前に出てきた後輩は初めて見る顔だった。一年生だろう。
「インターハイで女子の100メートルで優勝した人は、先輩がコーチしたんですよね」
その後輩の質問にみんなの目の色が変わった。
なんとなく、ぼくがここに呼ばれた理由が分かった。
「凄いですね。先輩も100メートルで優勝して、教えた人も優勝させるなんて」
「わたしたちにも何かアドバイスしてください」
「堀内先輩お願いします」
口々にそう言ってきた。
ぼくは隣で笑う葛城先生を少し睨んだ。
「ちょっと待ってくれよ。お前たちの目の前には、そのぼくを育ててくれた葛城先生がいるんだよ。ぼくの師匠の方がより多くのアドバイスが出来るじゃないか」
「まあまあ、堀内。堅苦しいこと考えないで、ミーティング感覚でみんなの話を聞いてやれよ」
(まったく……)
なんか陰謀に
中でも参考にしたのは綾乃の走りだった。
全国大会決勝で見せた、笑みを浮かべた走り方を、ぼくの仮説の範囲を超えないのを前振った上で、その有用性について語った。
「笑顔は大事なんだよ。笑みを浮かべて走ると、タイムが0.5秒縮まる事だってあるんだ。笑顔はメンタル的にもポジティブになるからね。筋肉に対してもリラックス効果があると思うんだよ」
「本当ですか? なんか冗談みたい」
と笑う女子の後輩にぼくは
「いやいや、本当の話だよこれは。おれも実践したし、早瀬にも実践させた結果だ」
「早瀬さんって、中学生の時どれくらいで走っていたんですか?」
と一年後輩の男子。
「彼女は12.20秒台だったよ」
「インターハイでは11.61でしたよね」
「そうだよ」
「という事は、0.6秒速くなったって事ですね」
後輩たちは「おお」と感嘆の声を上げた。
(なんか久しぶりだな、この感覚)
輪の真ん中にいる自分が、懐かしくもあり嬉しくもあった。
「ところで堀内先輩」
とひとつ後輩の女子がいたずらな笑みを浮かべた。
「早瀬綾乃さんは先輩の彼女さんですか?」
その質問にみんなが食いついてきた。
「あっ、おれもそれ気になっていたんですよ」
「先輩どうなんですか?」
「絶対そうですよね、早瀬さんってメチャ美人じゃないですか」
ぼくは苦笑いして、首を横に振るしかなかったが、最後に出た質問にはさすがに困惑した。
「わたしてっきり佐藤先輩に気があるんだと思ってましたよ」
「何言ってんだよ。そんなのあるわけないだろ」
ドキッとしたが笑って誤魔化した。
ともあれ後輩たちとの会話は順調だった。
最後まで練習を行う事はなかったが、アドバイスというか、ミーテイングというか、要するに気軽なコミュニケーションの場となった。
10時を回った頃、葛城先生の号令で終了とした。
「練習始めるよ」
「おー!」
後輩たちは気合を入れてグラウンドに出て行った。
「ご苦労様。あいつらにはいい刺激になったと思うよ」
葛城先生はあたかも目的はそれだと言わんばかりだったが、ぼくは途中で気づいてしまった。
ぼくは葛城先生を
「先生、これってぼくのための集まりじゃなかったんですか?」
葛城先生は笑った。
「さすがに
「練習を見てくれって電話で言わなかったですか? なのに練習は一切しなかった。それにわざわざぼくを話題の中心に持って行ったのも、なにか作為的でしたからね」
「ばれていたか」
どんな時も正直なのが葛城先生のいいところだ。
「西村ですか? 犯人は」
「違うね」
「まさか……」
と言いかけてぼくは口を閉じた。
葛城先生は意味深に笑みを見せた。
「たぶんそのまさかだと思うよ」
「早瀬?」
「そう」
「何で早瀬が?」
「犯人という言い方は的を射てないがね。おれの所に駆け込んで来たわけじゃないし、頼まれたわけでもない。三週間ほど前に、狭原池の周遊路を歩いている時にバッタリ出くわしてね」
あの日だ。葛城先生と出会ったのは、ぼくの家を飛び出した後なんだろう。
「詳しい話はしなかったけど、お前に告白して振られたって言っていたぞ」
「何だよ、それ。おれが悪者みたいじゃないか」
「まあまあ。彼女はそんな言い方してなかったぞ。元気ないからそれとなくお前の話をしたら、おれの誘導尋問に引っかかって、うっかり話してしまった、と言うのが正直な所だ」
葛城先生は机の上に残っていたペットボトルのコーラを紙コップふたつに注ぐと、ひとつをぼくの前に置いた。
「佐藤との事を引きずっているのか?」
葛城先生は西村と同じ事を聞いてきたが、ぼくはそれに答えなかった。
「もっとも、お前と佐藤の間に何があったのかおれは知らないけどな。プライバシーに関わる問題だから今までは触れなかったが、そろそろ脱皮しないといけないんじゃないかな」
ぼくは部室のロッカーの隅に目をやった。
高柳とめぐみがキスしていた場所だ。
「誰にでも言えるんだけど、旬の人、輝いている人の周りには自然と人が集まるものなんだよ。おまえだってそうだろ? 100メートルの中学チャンピオンの時なんか、モテモテだったじゃないか」
ぼくは苦笑した。
葛城先生が何を言おうとしているのか、ぼくにはまだ分からなかった。
「そう言えば、おれも自身のプライバシーについてあまり話してなかったよな」
葛城先生は大学時代に付き合っている彼女がいたと話した。
「インカレで優勝して、おれの周りにはたくさんの女性が近づいて来た。その中でピンと感じた娘がいて、おれは付き合う事にしたんだ。キレイと言うよりは可愛い子だった」
葛城先生は遠くを見るような目をした。
「程なくおれはその娘に夢中になったよ。そのお陰でキツイ練習にも耐えれたし、むしろ進んでやっていた気がする。これが愛の力なのかな、なんて思えたよ。覚えがあるだろ? 堀内にも」
確かに先生の言うとおりだ。
汗をかくのが嫌いなぼくが頑張って来れたのは、めぐみの支えがあったからだ。
葛城先生は大学三年生の秋季強化合宿中に膝の痛みが
「最初はすぐ直ると思ったし、膝の周りの筋肉を鍛えればカバー出来ると思い、更にトレーニングに励んだ。好きな彼女のバックアップもあってやる気満々で、無理を重ねてしまったんだ」
その結果先生の足はスプリンターとしてはもちろん、普通に走る事も出来なくなってしまった。
「ストーブの周りに人は集まるが、燃料が切れた
初めて聞く話だった。
「足の速さが
「先生はそれで納得できたんですか?」
「納得は出来ないよ。でもな、納得しようがしまいが世の中とはそういうものだ」
だから堀内にはよく考えて欲しいんだ、と葛城先生がぼくを見据えた。
「早瀬さんがお前に近づいた時、お前は火のついたストーブだったか? 光り輝いていたか?」
ぼくは首を横に振った。
「言い方が悪いかもしれないが、早瀬さんがお前に好意を寄せてきた時、お前は決して輝いているとは言えなかったはずだ」
「はい…」
「実際の所、今のお前は、さっき後輩たちといたような輪の中心にはいないんだろ?」
ぼくは頷いた。
「だけど、今のお前は本当のお前じゃないとおれは思っている。早瀬さんもきっとそれに気づいていたはずだ。光の中で本物を探すのは容易だが、暗がりの中で本物を見つけるのはかなり困難な作業だよ。でも、彼女は見つけてくれた。本当のお前をちゃんと見つけてくれていたんだよ」
涙して家を飛び出して行く綾乃の後姿がぼくには見えた。
「彼女はお前を誰よりも理解してくれているはずだ。違うか?」
ぼくは小さく頷くしかなかった。
「堀内、そろそろ前を向かないと、本当に後悔するぞ。もう二度と現れないかもしれないよ。早瀬さんのような女の子は」
「もう、遅いですよ…」
「そんなことない!」
と葛城先生は語気を強めた。
「お前だって気づいているだろ?」
「何をです?」
「お前と早瀬さんは、ベストマッチングなんだよ。三年前に初めてスタブロした時に感じただろ?」
綾乃のスタブロ役をした万博記念競技場での光景がぼくの脳裏をかすめた。
「あの時の一体感は、横で見ていたおれにも分かったよ。この二人はベターハーフだってな。ともに足裏を合わせたお前ならもっと強く感じたはずだ。違うか?」
「……ええ」
「早瀬さんもきっとお前との出会いを感じたはずだ。だから三年間もお前を追いかけていたんだ。佐藤と付き合っていることを知りながら」
「えっ? 早瀬はそれを知ってたんですか?」
「ああ。お前が初めて医院に連れてきた時、彼女は話してくれたよ。それを知りながらずっとお前を追いかけていたんだよ」
(早瀬……)
泣いている綾乃の顔がちらついた。
「お前は頭がいい。それだけに考えすぎるんだよ。堀内、余計な事は考えるな」
葛城先生はぼくの肩に手を乗せながら立ち上がった。
「ボーイ・ミーツ・ガール」
「えっ?」
「お前と早瀬さんは出会ってしまったんだよ」
その言葉を残して先生は部室を出て行った。
家に戻ると、直樹がテレビゲームをしていた。
家にテレビは一台しかないから、直樹なりに気を使って、一人の時にゲームをするようにしているようだ。
「兄ちゃん、お帰り。テレビ見る?」
「いや、いいよ。そのまま使っておけよ。で、それ何やってるんだ?」
「このゲーム? 『お引越し』だよ」
「『お引越し』?」
「そうだよ。引っ越しに伴ういろんな手続きやトラブルを解決しながら、予定の日時までに引っ越しを完了させるというシミュレーションゲームなんだよ」
「聞いたことないゲームだな」
「結構マニアックなゲームで、売れ筋ではないけど、おれは好きだよ、このゲーム」
「何か地味なゲームだけど、お前が好む内政型シミュレーションだな」
「おれもそう思うよ」
ぼくもたまにテレビゲームはするが「信長の野望」とか「三国志」などのシミュレーションゲームが
直樹も「三国志」はするが、ゲームの進め方はぼくとは対照的だった。
ぼくも含めて大体のプレーヤーは、軍事侵攻など戦いに重きを置いてゲームを進行するものだが、直樹は戦いそのものには興味はなく、治水・
普通二週間で終わるところ、国力を充実させながら軍事侵攻する直樹は一ヶ月以上かかる。
統治度を限りなく100%に近づけてゲームを終える事に、直樹は執着しているのだ。
とは言え、ゲームは全て友達に貸してもらうので、友人がいらなくなった地味なゲームが直樹の所に回ってくる、という事も無きにしも非ずなのだが。
「明日から二学期だからな。準備はしておけよ」
「はい、はい」
背中を向けたまま生返事をする直樹に背を向けながら、明日からの事を思うとぼくは気が重かった。
新学期が始まった。
始業式を終えて教室に戻る途中、階段で綾乃と一緒になったが、ぼくを一瞥しただけで足早に一組の教室へ向かった。
(だよな。これでいいよな…)
ぼくは自分に言い聞かせた。
その日は午前中で終了なので、問題は起こらなかったが、翌日からは六時間授業だった。
授業そのものに問題があるわけではない。
要は昼休みだ。
案の定、一人でパンをかじっているぼくに、山際佳代子が興味津々で近寄ってきた。
「堀内君、綾乃ちゃんと何かあったの?」
(来たか……)
山際だけではない。教室にいる者が同一の視線をぼくに向けていた。
「ないよ」
「それじゃ、綾乃ちゃんは何故来ないの?」
「契約が終わったからだよ。インターハイまでのコーチだからな」
「そんなぁ」
「おれは十分すぎるくらい結果を出したんだ。褒められても文句言われる筋合いはないだろ?」
取り付く島もない物言いをした。
綾乃の人気はうなぎ上りだった。
学校の廊下でも、クラスの中でも常に人の輪が出来ていた。
放課後の校庭を走る陸上部員も、団体競技を凌ぐ人数に膨れ上がっていた。
(早瀬効果といった所だろうな)
「お前たち別れたのかよ」
「いい女なのになんで?」
「振ったのかよ?」
と興味本位で聞いてくる男子の多さにはウンザリさせられる。
もっとも、あれだけ公然と二人して手作り弁当を広げて食べていたんだから、付き合っていると思われても仕方ないだろう。
とは言え、その
「振られたんだ」
そう答えた方が短くて済むし、
新学期が始まって数日しか立たないのに、日々の中で綾乃の姿がいつになく目に付くと感じていた。
綾乃が特別な行動をしているわけではない。
ぼくの目が綾乃を追っているのだ。
割り切ったつもりでも、男子と二人で歩いている綾乃の後姿を目にした時は、
(すぐに慣れるさ。今だったらまだかすり傷で済む)
そう自分に言い聞かせた。
終止符を打ったのはぼく自身なんだから。
そしてそれは、九月第一週の金曜日の放課後だった。
下校しようと靴箱に手を入れた時、ぼくは挟まれているメモに気づいた。
本日 三都神社境内にて待っています
宛名も差出人も、時間すら記されていなかった。
ぼくはメモを丸めるとゴミ箱に投げ入れた。
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