第36話 長い物語
161 ガイドツアー開始
「それじゃガイドツアー、始めるよ。と言ってもこのツアー、ものすごく長い間実施されていなかったからね。常識とかなり違う内容で理解しにくいかもしれないけれど、その辺は質問の時間を適宜設けるから」
ペレス先輩、いや俺の先輩ではないからペレスさんというべきだろうか。
彼がそう言うと同時にふっと覚えのある感覚が俺を包む。
移動魔法だ。
ついたのは座り心地の良さそうな椅子が多数並ぶ円形の部屋。
部屋はほぼ円形で、天井が高くドーム状になっている。
「まずは何故、何の為にここがあるのか。どうやってここに来たのかについて、古い古い話から順を追って説明するよ。幻像魔法みたいな方法で映像と音を出して説明するけれど、害はないから心配はしないで。
それでははじまりはじまり」
ペレスさんがそう言い終わると同時に周囲がふっと暗くなる。
そして上の天井があったあたりに星空に見えるものが見え始めた。
聞いたことが無い音楽が流れ始める。
夜空の左側から青色と白色をした鳥型? の魔物がよちよち歩きながらやって来た。
一瞬警戒しそうになるがすぐ気づく。
あれは本物ではない、幻像魔法のように実態がない代物だ。
そう言えば害はないから心配はしないでとペレスさんが言っていたなと思い出す。
その鳥型の魔物が俺達の方をくるりと向いた。
『イベリア
妙に明るい口調で魔物がそんな事を話す。
マスコットキャラクターとは何なのだろう。
そういった人間に友好的な魔物が此処にはいるのだろうか。
そう思っているうちに魔物の背景の夜空が変化する。
夜空の中に巨大な白い物体が浮かんでいる。
白い太い筒のような形のものに風車の羽根のようなものが4枚ついているような形だ。
『これが今、僕達が住んでいる大陸型
白い円筒の内側にやや片側がすぼまった円筒状の空間が赤く表示される。
つまり普段俺達がいる大陸とはこの円筒状の部分なのだろう。
そう思ったら動いていた円筒の幻像が止まる。
「僕からかるく注釈を入れるね。普段君達が住んでいる街や大地、海なんかはこの白い円筒の内側、赤く表示されている部分の内側にあたる部分になるよ。
この円筒はかなり早い早さで回転している。石に紐をつけて振り回すと石が外側に飛んで行こうとするよね。あれと同じ力で内側にあるすべてが外側にひっぱられるようになっているんだ。
そういう場所に住んでいるんだと思ってくれれば今はいいかな。
それじゃ次行くよ」
ペレスさんの声だ。
わかりにくいと思って説明を加えたらしい。
再び幻像が動き出す。
『そして今いる
白い円筒の羽根がついているのと逆側の端部分が赤く表示される。
『この部分にある理由は簡単、宇宙船を泊めるのに都合がいいからだよ。何故かというとこの円筒、実はかなり早い早さで回転しているんだ』
白い円筒全体が回転している幻像が映し出される。
『こうやって常に動いている場所に宇宙船を泊めるのは大変だよね。だから動かない端っこの真ん中、この辺に宇宙船を泊める場所を造ったんだよ。それが此処、
再び幻像が止まる。
「宇宙船というのは星々の間の暗い場所を人を載せて運ぶ船のようなものだと思ってくれればいいかな。星々の間は重さというものがあまりない場所だから、空を飛ぶのと同じように前後左右の他に上下にも簡単に動けるんだ。
ただ空気がないから普通の船よりごつくて複雑なものになるけれどね。この宇宙船については後で実物を見るから、その時にまた説明をすることになるよ」
俺はペレスさんの解説がなくてもある程度話についていける。
ある程度自室で端末に質問をして予習をしておいたおかげだ。
でも皆はペレスさんの解説を聞いても理解できているだろうか。
アルストム先輩やフィンはいいとして。
ミリアあたりは俺と同様ある程度予習をしているかもしれない。
でもライバーやアンジェは理解できているだろうか。
かなり怪しいなと思いつつ、俺は幻像を見続ける。
『さて、それじゃ僕達がいる大陸型
幻像がまた変化する。
中央に赤い球形、その赤い球形を中心として円状にいくつかの球や羽根つき円筒が回っている様子だ。
『中心にあるのはアルタ32と呼ばれる自分で光る大きな星。その周りを4つの光らない星と3つの大陸型
そう、気付いたかな。ここイベリアと同じ形と大きさの大陸型
イベリア、マダガスカル、アナトリアはアルタ32を中心とした正三角形を描くような場所にあるんだ。今は遠く離れているけれど、どれも同じ時に造られたもので、同じように人間が住んでいるんだよ』
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