147 いつもの場所で新装備確認
いつもの休憩場所に到着。
フィンは早速自在袋から装備を出していく。
「天幕の建て方は前のと同じでいいのか?」
「そうだよ。設計そのものは変えているけれどね」
どれどれ、早速寄ってたかって設営開始。
棒は軽銀製で以前のものよりかなり太く、長くなっている。
だが棒を天幕生地に入れるところはほぼ同じだ。
立った形も以前と同じように半球形に近い。
ただ棒が交わる点が以前より低い位置になっている。
「この棒の位置の違いは何か理由があるのか?」
「今の位置の方が風に強いんだ。軽銀だから太く長くしても重さは変わらないしね」
その辺の違いはどうやって考えるのだろう。
実際に模型を作って風を起こすのだろうか。
それとも何か他に方法があるのだろうか。
「あと、こっちがマットの代わりになる簡易ベッドね。大きいのがライバー用であとは同じサイズだよ」
確かにライバー用は大きくしないと入らないだろうな。
そう思いつつ簡易ベッドを手に取る。
セットは簡単、3つ折り状態になっているものを広げて、足にあたる部分を立てるだけ。
大きさはライバー専用以外は長さ
頑丈そうな軽銀フレームで寝床にあたる布を張るという仕組みだ。
「ベンチっぽい形ね」
「ベンチとしても使うつもりだよ。ただこの高さにしたのはベンチとして使う為というより寒さ対策かな。北の高山地帯で使うからね。地面からの冷気を少しでも遠ざけるように高めにしたんだ」
なるほど。
「でもそれだと通気性が良すぎて寒くならないか」
「その為に専用の寝袋を作ってみたよ。普通の寝袋の下にマットを敷いてもでもいいんだけれどね、トロルやハイオークの毛皮なんて素材が余っていたからついでに作っちゃった」
あの一斉討伐の最後に狩ったけれど売る事が出来なかった素材か。
そう言えば解体した後フィンに渡したけれど、こういう風に使うとは思わなかった。
「どれどれ、早速寝心地チェーック!」
アンジェが簡易ベッドの上に専用寝袋を置いて、中へと潜り込む。
「あ、これ、確かにいいかも。ベッドのような程よいクッション感もあるし暖かいし。寮の布団よりいいかも」
「そりゃ超高級素材だしなあ」
確かにモリさんの言う通りだ。
トロルやハイオークの毛皮なんて滅多に手に入る代物ではない。
普通の生活をしていればだけれども。
「簡易寝具や寝袋に何か改良したい点、あるかな」
「私は無いなあ。あとこの寝袋だけでも持って帰りたい。寮で使いたい」
「それは人数分と予備含めて15人分あるからいいけれど」
フィン、予想外の好評に若干戸惑っている様子。
「なら俺達も確かめるか」
「そうね」
何か皆で昼間から横になるのも変だよな。
でも全員別のベッドだから問題ないのか。
そんな妙な事を考えつつ、俺も試してみる。
あ、確かに単に張っているだけの布なのにクッションっぽさを感じる。
少なくとも固さは感じない。
そして上質な毛皮上下で寝心地もいい。
ただ温かいだけではなく暑すぎないのだ。
「確かに野営専用にしておくの、もったいないよな」
「わかるぜ。俺も寮へ持ち帰りたい」
「同感ね。こんなので寝たら逆に寮の布団に戻れないかも」
おいおい。
でも気持ちはわかる。
確かにそれくらいの寝心地の良さだ。
「簡易ベッドの布、僕が試した時には思い切り張った状態の方が寝やすい感じがしたからそうしてみたんだけれどどうかな」
「うーん、今の状態で文句が思いつかないよね。強いて言えばこの感じでもっと幅広のが欲しいかなって感じ。学校のベッドと取り替えたい」
「流石にそれは野営用にはならないよね。今のサイズでも天幕に5個並べるのが限度だし」
「現地では天幕を幾つ使う計算なの?」
「予定では3つだよ。女性用2つ、男性用1つで。人数的にそんなもんじゃないかな」
確かに妥当だなと思う。
アルストム先輩と同一の天幕というのもまあ人数を考えれば仕方ない。
向こうのパーティは男1人女4人だから。
「あとはこの簡易寝台を椅子代わりに使うテーブル。取り敢えず6人で囲む計算で作ってある。簡易寝台を2個だけ残して片づけて、中央に置けばちょうどいいサイズの筈だよ」
けっして広くはない天幕をうまく使えるように考えられているようだ。
「確かにこれなら天幕でも屋内に近い環境で使えるわね」
「これも前の天幕と同じように広めればかなり金になるんじゃ」
おいおいライバー。
「今回の使用素材を考えると無理だよな」
「そうだね。市販モデルを出すのは無理かな。せいぜいクーパー達のパーティ用と、4人までの小型を作るくらいで」
確かにモリさんやフィンの言う通りだろう。
軽銀は高価ながら多少は出回っている。
しかしハイオークやトロル素材となると流石に無理。
あっても上位貴族や大商人のコレクション扱いだ。
「それなら後は普段の装備の整備と改良だね」
「うーん、でもこの寝心地、もう少し……」
おいおいアンジェ。
本気で寝そうになってどうする。
「水属性状態回復魔法、上級版!」
ミリアが容赦なく魔法を起動。
睡眠も魔法的には状態異常扱い。
だから状態回復魔法で睡魔を吹き飛ばす事が出来る。
「……ええっ、せっかくの眠気が……」
「今は装備整備の時間よ。さっさと寝袋から出る」
ミリアがアンジェを寝袋から追い立てた。
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