145 無断改築の発覚
倉庫漁り作業は1時間近くかかってしまった。
「記念程度にしては随分持ってきているよね」
「これくらい重くないと記念という気がしないからさ」
「そうそう」
前衛2人はにやにやしている。
なお2人とも普及型自在袋、つまり装備含めて
一方モリさんも
「モリさんのインゴットは何かに使うつもりなのかな」
「いざという時の特殊矢用だな。勿体ないけれど重いし性質的にも特殊矢に適していると思ったんだ。性質的には鉛でもいいんだけれど分析結果で毒と出るしなあ」
なるほど、前衛2人とは違う理由のようだ。
フィンも納得したようで頷いている。
「なるほど、確かにそうだね。ちょっと興味があるから僕もいくつか作ってみるよ」
うーむ。
白金製の特殊矢か。
目的はわかるがそれはあまりに……
「なんという勿体ない使い方なんだ」
ライバー、確かに俺もそう思った。
言えなかったけれど。
「いざという時用だよ、あくまで」
「そうそう。命には代えられないしね」
うーむ、モリさんは貧乏性だと思っていたがこういう思い切りよさもあるのか。
確かに攻略本等にはお金を惜しまないしな。
その辺の使い分けは俺よりもシビアなのかもしれない。
お金のために昼飯を抜いたりはするけれど。
「さて、それじゃラトレへ行くか」
「でもライバーとアンジェは自在袋の中身、そのままでは何も出来ないわ。だいたい街中を武器出しっぱなしで歩くわけにはいかないでしょ」
「あ、確かに」
その通りだ。
仕方ないな。
「学校内の目立たないところまで魔法で移動する。一度寮の部屋へ戻って置いてこよう」
「あ、それならちょっと待って。僕もぎりぎりまで材料を入れるから」
おいおいフィン。
フィンの自在袋帳は合計許容量がライバー達とは桁違いだろう。
「床が抜けないか。そんなに部屋に置いたら」
「1階だしね。床も強化してあるから問題ないよ」
それは初耳だ。
しかしいいのだろうか。
寮を勝手に改造して。
まあ他に迷惑がかからないだろうから苦情は出ないだろうけれども。
すぐ近くの部屋に住んでいる俺ですら気づかなかった位だしな。
「なら俺達も手持ち出来るぎりぎりまで」
「駄目よ。せめて自在袋に隠せる程度までにしなさい」
白金のインゴットを手持ちで持って学校内を移動は流石にまずいだろう。
冒険者学校の生徒は基本貧乏人ばかり。
見つかれば大騒ぎになるのは目に見えている。
だから俺は2人の『なんとかならないか』という2人の視線を無視することにした。
◇◇◇
学校の本部棟の裏に移動魔法で出る。
「次の鐘がなったら集合ね」
ミリアの台詞で一度解散。
フィンの部屋は俺の部屋の隣の隣だ。
だから戻るルートはまったく同じになる。
そのついでに興味本位で聞いてみた。
「そういえば床、どんな感じに改装しているんだ」
「一応見ただけではわからないようにしてあるけれどね。見てみるかい?」
「ああ。参考までに」
「ならどうぞ」
そんな訳で部屋に入って見せて貰う。
一見した限りは他の部屋と変わらない。
怪しい物が少々多いかな程度だ。
しかし走査してみると何だこれは状態。
床の下に明らかに他の部屋と違う構造物を感じる。
「これ、下にもう一つ部屋がないか?」
「部屋というか床下収納みたいなものかな。作業場と貯蔵庫だよ。木の床だとあまり重い物を扱えないし、思い切った熱処理も出来ないしね」
フィンはそう言って床の一部を自在袋に収納する。
入り口付近とベッド付近以外の部分が
その部分は全体が石と焼き土で固められていて、一部にぎっちり金属インゴットが敷かれ、更に木炭が置かれていた。
「この木炭は?」
「乾燥用だよ。湿気ると
なるほど。
それにしてもだ。
「前はこうなっていなかったよな」
この部屋は何度か入った事があるから知っている。
夏頃まではこうなっていなかった筈だ。
「
そんな事を言いながらフィンは今回持ってきた
「今回は主に軽銀なんだな」
「使いやすいからね。あとは錆びにくい鉄合金と白金も。白金はモリさんが言ったのを聞いたからだけれどね。確かに重いし適度に伸びるから特殊矢に向いているよね。ちょっと僕では思いつかなかったな」
うーむ。
「俺も思いつかなかったし、未だにもったいない気もするな」
「確かにもったいないよね。だからこれはいざという時しか使えないかな。あの倉庫にもそこまで大量にはなかったしね」
となると心配事も出てくる。
「ライバー達があんなに持ち出して大丈夫だろうか」
「あの程度なら問題ないよ。それにライバー達もそう簡単に換金できないと思うしね。白金は流通量が少なすぎるから。せめて金なら小分けにすればある程度は換金出来たと思うけれど」
なるほど、確かに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます